もはや農家のための組織ではない
山形の事件を考えるうえでもう一つの重要な側面は、このカルテル(独占的な行為)は誰に対して向けられたのかということだ。
販売手数料とは、農家に農産物の販売を代行して行うというサービスを提供することに対する対価である。つまり顧客は農家である。農家は、JA農協の組合員であり、その主人である。肥料の場合と同じく、農家が利用するために作った農家のための組織であるJA農協が独占的な権利を、主人である農家に対して行使したのである。
この事例だけでなく、JA農協が独占禁止法違反として指摘される行為は、JA農協の外部に対してではなく内部の組合員に対してのものがほとんどだ。これは、組合員のために活動するという協同組合原則に明らかに反するし、JA農協が農家のための組織ではなくなっていることを如実に物語っている。
農協による農家いじめを許すな
農産物の販売や資材・サービスの提供から融資業務まで、ありとあらゆる業務を行えるJA農協は、組合員に対して圧力をかける手段に事欠かない。特に、JA農協は銀行業務と他の業務を兼業できる日本で唯一の法人である。生協には、このような特権はない。
JA農協を通じないで、農産物を販売したり肥料や農薬を購入する組合員に対して、JA農協の育苗施設やコメの調整施設の利用を禁止したり、融資を断ったりして、独占禁止法(不公正な取引方法)違反であると指摘される例が絶えない。
融資を受けたいなら農協から肥料等を購入しろと言われると、農家は他から購入したくても、JA農協から買わざるをえない。単に市場支配力が高いだけではなく、銀行業を兼務できる日本で唯一の特別な法人であることが、JA農協が独占的な価格を農家に強いる大きな要因となっているのだ。
連合会と単位農協との関係も同じである。連合会が種子会社に対し、連合会を通さないで種子を購入しようとした単位農協に、種子を売らないように圧力をかけたという事例もある。生協の場合は、地域の生協も全国レベルの生協も同等である。
ところが、JA農協は、全国の連合会、都道府県の連合会、地域の単位農協というピラミッド型のヒエラルキー構造になっているのだ。これが連合会の独占力を高めている。残念ながら、最も弱い立場にあるのが、本来は主人のはずの組合員農家である。
銀行業を兼務できるほどの力を持つJA農協を独占禁止法の適用除外としてよいのか? JA農協と独占禁止法の関係を見直す時期に来たのではないだろうか?


