高い肥料を組合員に買わせる農協
大きな農家はわざわざ韓国から肥料等を輸入している。原料価格は同じなのに、JA農協よりも3割安く買える。JA農協は圧倒的な市場支配力を利用して独占価格を本来主人である組合員農家に押し付けているのだ。
これは独占禁止法との関係で極めて奇妙なケースである。複数の農家が農産物を共同してできる限り高く販売すれば、これは形式的にはカルテルになるが、農協を通じて販売するときは独占禁止法違反としないというのが適用除外の趣旨である(強いて言えば被害者は消費者)。同じく生協の場合には、複数の消費者が生協を通じてコメや野菜などを共同して安く購入してもカルテル違反を問われない(被害者は卸売業者または農家)。ところが、農業の場合には、農家は共同して肥料等の資材を農協を通じて高く購入している。資材の場合はカルテルの被害者はカルテル行為を行っている農家自身ということになる。加害者が被害者という“自傷行為”なのだ。
このような奇妙な法律関係になるのは、農協とそれを作った組合員農家との関係で、本来安く購入するはずなのに高く購入するという、あり得ないことが起こっているからだ。
これでは農家は何のために農協を作ったのかわからない。独占禁止法に違反するどころか、協同組合の精神や原則にも反している。かれらに、“協同の精神”を語る資格はない。
奇妙な独禁法の運用「山形農協カルテル事件」
しかし、JA農協のカルテルは独占禁止法の適用を受けないはずなのに、2014月9月に山形県の5つのJA農協がコメの販売手数料でカルテルを結んだとして、独占禁止法違反の疑いで公正取引委員会から警告を受けた。A農協、B農協、C農協、D農協というJA農協同士が集まって、農産物の販売価格などを決めて、JA農協同士が相互に守るという行為は、独占禁止法違反のカルテルとなると、解釈・運用されている。
奇妙なのは、JA農協の連合会(県の経済連や全農)が農産物の販売価格を決めて、(A~D農協を含む)傘下のJA農協に守らせるという行為は、独占禁止法違反にはならないということだ。
山形県のJA農協連合会や全農が販売手数料を決定し、傘下のJA農協にこれを守らせるようなカルテルを結ばせていれば、独占禁止法違反とはならなかった。山形県のJA農協は、このような独占禁止法の仕組みを知らなかったために、違反事件を起こしたのだ。
この事件が示唆するように、個々のJA農協がカルテルを結べば違法でも、JA農協の連合会(JA全農など)という、より巨大な事業体であれば、独占禁止法の適用除外を受けることになるのは、極めて不合理だ。

