農協は協同組合ですらない

そもそも生協と異なり、JA農協は、そのままでは独占禁止法第22条の要件を満たさない。

JA農協は、正組合員である農業者(小規模事業者)だけでなく、地域住民であれば農家でなくても誰でも組合の施設を利用できる、准組合員という特殊な制度を持っているからである。准組合員は独占禁止法第22条について、①の事業者ではないし、③の議決権を持っていない。つまり、准組合員を有するJA農協は、独占禁止法第22条の①と③の要件を満たさないので、本来なら独占禁止法の適用除外規定の対象とならない。

利用はするが意思決定に関与しない准組合員制度は、利用者(組合員)が組合を管理(コントロール)する(所有・管理する者が組合を利用する)という協同組合の大原則から外れたものであり、当然だろう。

実態を見ても、1960年では正組合員578万人に対し准組合員は76万人に過ぎなかったものが、2024年では正組合員377万人に対し准組合員は638万人に増加している。そもそも一農家から一人組合員が出ているのが通例であり、正組合員が農家戸数を大幅に上回っていることは、農業をやめた人も正組合員のままになっていることを示している。今のJA農協は“非農家”の組合員の方が多い“農業”の協同組合になっている。

【図表】総農家戸数とJA組合員の推移
筆者作成

准組合員ばかりか員外利用制度もあるので、農協は不特定多数と取引するという、協同組合とは理念的には対立する株式会社と同じような存在になっている。組合員だけが利用する本来の協同組合なら、不特定多数を相手にテレビでJAバンクやJA共済のコマーシャルを行うことはないはずだ。

農協法第8条を廃止せよ

さらにJA農協は、理念に反して、多数の株式会社を子会社として設立している。

【図表】農協が50%以上出資している株式会社数の推移
筆者作成

理念上も実態上も、JA農協は協同組合というより、本来それが否定する株式会社に近い存在になっている。ところが、農協法第8条は、JA農協は独占禁止法第22条の①と③の要件を備えるものとみなすと規定して、JA農協が独占禁止法の適用除外を受けられるよう、救済措置を講じた。

みなし規定とは、そうでないものをそのように扱おうというものである。どんな地域のJA農協にも、准組合員はいる。つまり、農協法第8条がなければ、JA農協には、独占禁止法が適用されてしまうのだ。

農協法第8条を削除さえすれば、准組合員制度を持つJA農協やJA農協連合会に独占禁止法を適用できる。カルテルか、「不当に対価を引上げる」場合に該当するか、という議論をしなくても、JA農協に独占禁止法が適用されることになれば、JA農協によるコメの減反(生産調整)や高価格の維持は明らかに独占禁止法違反となる。

なお、農協法第8条のみなす規定を維持する場合でも、林秀弥・名古屋大学院法学研究科教授等は、「連合会については、みなし規定からはずすことや一定規模以上の単位農協についても、同様にみなし規定からはずずことについて検討しなければ、今後みなし規定の意義が失われてしまうのではないか」と指摘している(林秀弥・西澤雅道「経済法と農協改革」393ページ参照、名古屋大学法政論集第264号、2015年12月)。