理念への回帰――「都市鉱山」との出会い
「偶然読んだ書籍で、『都市鉱山』というものの存在を知りました。都市で大量に廃棄される使用済み工業製品には、金、銀、銅やレアメタルなど貴重な金属資源が多く眠っているのだと」
そこで再び黒田さんの行動力が発揮される。すぐに本の著者である学者の原田幸明氏に連絡を取り、当時在籍していたつくばの研究所まで押しかけて話を聞いたのだ。
日本の都市鉱山には、資源国並みの希少金属が眠っているにもかかわらず、発掘されることなく廃棄されている。自分たちが培った本の宅配回収業で廃棄家電を回収してリサイクルすれば、資源不足の日本に貢献し、循環型社会を実現できるのではないか。
利益だけを追求する資本主義の鎖から、解き放たれた瞬間だった。
しかし、実現するのは簡単ではない。パソコンや携帯電話の中には、たしかにリサイクル可能な金属がある。だが、ノートパソコン1台あたりに含有されているのは、金なら約0.02~0.05グラム、銅は200~400グラム程度にすぎない。銀、鉄、リチウム、コバルトなど、すべての金属を取り出せたとしても、わずかな利益にしかならないはずだ。
「100人に聞けば、99人は絶対無理だという事業でしょう」
さらに不燃物・プラスチック・有害物質(鉛、フロン)が混在し、分別プロセスが複雑なうえ、手解体工程が省けない部分が多く、自動化も難しい。
ビジネスとして成り立たせるのは難しいと思われた。
「100人に聞けば、99人は絶対無理だという事業でしょう。でもそのときは実現できると思い込んでいました。今だったら、新規事業を立ち上げる際には、戦略やマーケティングなどを考えるでしょうね。でもそのときは、会社の売却騒動からもう一度社員一同心をひとつにして立ち上がる方が大切で、みんなで一丸となって目指すための目標が必要だったんです」
黒田さんの突然の新規事業宣言に、社内はぽかんとしていた。古本ネット販売の会社が、なんのノウハウもないまま「都市鉱山のリサイクル」と言われても、何をどうしてよいのやら。窮地に陥った社長が、またおかしなことを言い出したと。
「社員がみんな信じないので、私も本気を見せなければと思いました。覚悟を見せるため、先に新聞一面にでかでかと、広告を出してしまったんです」
2010年10月28日、日本経済新聞の朝刊に、ネットオフ新規事業の広告が大きく掲載された。そこには、段ボール箱を抱えた黒田さんの写真とともに、こんな一言が添えられている。
「宅配回収から、世界を変える会社」




