中国が選択するグレーゾーン戦略
統一を諦められない一方で、軍事的な完全勝利は構造的に得られない――この矛盾の中で中国が選択してきたのが、戦争でも放棄でもない第三の道、すなわちグレーゾーン戦略だ。
軍事演習の常態化、航空機や艦艇による接近、経済的圧力、サイバー攻撃、認知戦、外交的孤立を組み合わせ、戦争に至らない形で台湾の行動空間を狭めていく。狙いは短期的な勝敗ではなく、時間そのものを武器にすることだ。年単位、十年単位で台湾の選択肢を削り、国際社会の関心を消耗させ、米国の関与意志を試し続ける。
その結果、台湾海峡では、開戦には至らないが緊張は解けない、不安定な均衡が常態化することになる。
台湾有事は日本にとって何を意味するか
軍事侵攻を含む台湾有事が起きれば、日本経済は大きな打撃を受ける。
まっさきに影響が出るのは半導体関連だ。日本の自動車産業や電子機器産業は海外からの部品供給で成り立っており、台湾からの供給停止は生産全体に影響を及ぼす。
次に海上輸送。台湾周辺は日本の輸出入の動脈であり、有事の際は輸送コストと保険料の急騰、さらには代替航路の不在によって日本企業のサプライチェーンが広範に停滞する。
金融市場への影響も甚大だ。地政学リスクの顕在化は株式・為替市場に即時に反映され、企業の資金調達コストから個人の資産価値まで、日常的な経済活動の前提を揺るがす。
こうした経済影響への対策は当然進めるべきだが、それだけでは足りない。日本がやるべきは、日米同盟を「政治判断に委ねない仕組み」へと再構築することだ。
現在の日米同盟は、有事の際に米国がどこまで関与するか、自衛隊と米軍がどのように連携するかが、その時々の政権の判断に大きく委ねられている。これは中国側に「米国は本当に来るのか」という疑念の余地を与え続けることになる。基地使用、後方支援、指揮統制を平時から具体化し、危機発生時に「米国が介入するかどうか」を議論する余地を残さない。
台湾有事は、すでにグレーゾーン戦略のもとで進行しつつある。米国の関与を不確定要素にしないこと、すなわち中国に「勝てる未来」を想像させないことが、日本にできる最大の抑止といえるだろう。

