台湾の半導体産業を止めれば中国にも打撃

そして中国にとって最も大きな制約となるのは、経済システムの遮断リスクだ。

戦争が発生した場合、G7諸国は金融制裁・輸出規制・投資制限を同時に発動する可能性が高い。特に半導体製造装置、航空機部品、高性能素材といった分野への輸出規制は、中国の産業構造に直接的な打撃を与える。

金融面では、ドル決済網からの部分的排除や国際資本市場へのアクセス制限が発生する可能性があり、その場合、中国企業の資金調達コストは急激に上昇する。外資系企業の撤退や投資停止も加速し、経済の流動性そのものが低下する。

もっとも、中国もこの数年で人民元決済システムを整備し、サプライチェーンの内製化を進めるなど制裁耐性を高めるための対策を打ってはいる。だが、それでも逃れられないのが、台湾の半導体産業が世界的な供給網の中核を構成しているという事実だ。

とりわけ先端プロセスの製造はTSMC(台湾積体電路製造)がほぼ独占しており、最先端の3ナノメートル世代では世界シェア約90%を占める。その供給停止はスマートフォンやAIサーバー、自動車、通信インフラといった複数の産業へ同時に影響を及ぼす。

つまり台湾有事が発生した場合、中国は世界経済の混乱の影響を直接受ける側にも回ることになるわけだ。

占領できても統治は安定しない

さまざまな制約を乗り越えて、中国が台湾本島を軍事的に制圧したとしよう。しかし台湾問題はそれで集結するわけではない。

台湾社会は長年にわたり民主主義制度を維持してきた。選挙制度、司法制度、報道の自由といったあり方が社会全体に浸透している。自由な社会で育った市民は、外部勢力による支配を正統と認めない。占領後には、抗議活動や不服従運動、地下組織の形成といった抵抗が広範に広がっていくだろう。

そのため中国は占領後、治安維持と情報統制を同時並行で実行しなければならない。それは一朝一夕には終わらず、統治コストは時間とともに拡大していく。

さらに、その段階でも戦争が継続している場合、外部からの圧力も並行して存在する。海上封鎖のリスク、補給線の防衛、サイバー攻撃への対応などが重なれば、軍事的負担は長期化する。

結果として中国は、外部との軍事的対立と内部統治という二重の負担を同時に抱える状態に固定される。