良好な人間関係を築くには、どうすればいいのか。ドラえもんを研究する富山大学名誉教授の横山泰行さんは「スネ夫は“嫌なやつ”という扱いをされるが、人をホメることに関しては芸術の域に達している。スネ夫の言い回しには、大人が学べるポイントがいくつもある」という――。(第1回)

※本稿は、横山泰行『ポケット版「スネ夫」という生きかた』 (アスコム)の一部を再編集したものです。

スネ夫のホメるテクニックは「芸術の域」

『ドラえもん』のスネ夫といえば、自慢話ばかりで、ジャイアンに調子よく取り入る“嫌なやつ”の印象を持つ人が多いかもしれません。

ところが、長年『ドラえもん』を読み解いてきた私からすれば、こと人をホメることにかけて、スネ夫は達人です。しかも口先だけのお世辞とは違い、相手をよく観察し、頭を使って魅力を探し出す。もはや、スネ夫のホメるテクニックは、芸術の域に達していると言えそうです。何がすごいのか、具体的な場面から見ていきましょう。

ジャイアンがスネ夫に話を切りだしました。

「いっしょうけんめい歌のレッスンしてたらよ、かあちゃんがよ、家の中でヘンな声を出すなって。パシーッとひっぱたくんだよ」とジャイアン。

スネ夫は思わず「ウシャシャシャ、そりゃそうだろ」と笑ってしまいました。しかし、ジャイアンに「なんだと⁉」と凄い形相で睨みつけられ、スネ夫は「そりゃひどい‼ きみんちのママはきみの歌のすばらしさがわからないんだ。きみこそ日本一の大歌手になる人だよ。なにがなんでも練習をつづけなくちゃ」と口走ります。

すると、ジャイアンはスネ夫をしっかり抱きしめ、「心の友よ‼ おれの芸術がわかるのはおまえだけだ」と大粒の涙を流しました……。

藤子・F・不二雄大全集ドラえもん 第15巻』小学館 第76話目「鬼は外ビーンズ」

「歌がうまい」を具体的に言い換えた

では、解説しましょう。

まず、1か所目。「きみこそ日本一の大歌手になる人だよ」というスネ夫のフレーズは、「歌がうまい」という意味を具体的に、何倍も上手に言い換えています(具体的にホメる法則)。また、このフレーズには「相手に夢をもたせる」という効果も期待できます。普通の人にはハイパーなワザですが、参考になりますね(夢を与えつつホメる法則)。

マイクを持つ歌手のシルエット
写真=iStock.com/BlakeDavidTaylor
※写真はイメージです

次に、2か所目。「(ジャイアンは)なにがなんでも練習をつづけなくちゃ」というスネ夫のことばに注目してみましょう。このように「相手に何かを提案することが、結果的にホメにつながっているスタイル」のことを、私は「アドバイス型」と呼んでいます(アドバイスしながらホメる法則)。これも職人ワザ級のホメ方ですが、「アドバイスをするのは、あなたを大切に思うからこそ」という気持ちが直球で伝わります。

いかがでしょう。スネ夫流「ホメる作法」の世界がおわかりいただけたでしょうか。スネ夫から学ぶ「ホメどう」は、まだまだ奥が深いものです。本書を読み進めるほど、あなたのアタマは確実に進化をしているはずです。さらに、スネ夫の「ホメ道」を堪能していきましょう。