周囲からの信頼が厚い人は、何が違うのか。ドラえもんを研究する富山大学名誉教授の横山泰行さんは「スネ夫はお調子者に見えるが、それは一面にすぎない。実は誰よりも努力家で、謝罪する姿勢も見事だ。大人が見習うべきことは多い」という――。(第3回)

※本稿は、横山泰行『ポケット版「スネ夫」という生きかた』 (アスコム)の一部を再編集したものです。

スネ夫は根性の据わった努力家

天才的に要領がよく、ちゃっかりしたイメージの強いスネ夫。ですが、実は意外な一面があります。それは、意外にも根性の据わった努力家であるということ。一般的なイメージからすれば驚くかもしれませんが、エピソードを見ると、地道な努力家ぶりがわかります。さっそく見てみましょう。

ある日の新聞に「坊や屋上から転落」という記事がありました。赤ん坊がアパートの屋上から落ちる瞬間の写真が掲載され、撮影者は骨川スネ夫くんと書かれてありました。赤ん坊の命に別状はありませんでした。写真を見た一同は、撮影者がスネ夫だったと知って仰天します。

記事を読んだしずちゃんは「スネ夫さんの写真が新聞に‼」と驚き、ジャイアンも「よくこんな場面がとれたなあ」と、口を大きくアングリと開けて感心します。

のび太だけが「そんなのぐうぜんだよ。カメラを持ってるときたまたま事件にぶつかった」と茶々を入れると、スネ夫は飛びかからんばかりの姿勢で、のび太に「ぐうぜんとはなんだ‼」と猛烈に食ってかかります。そして、常備しているポケットカメラをのび太に見せながら、「決定的瞬間をつかむには、それなりの心がまえが必要なんだ」と説明しました。

スネ夫がのび太を「やきもちやいてんだよ。のび太にとれるのは日光写真ぐらいのもんだから」と茶化すと、かたわらのしずちゃんもジャイアンも、スネ夫の言うとおりだという納得の微笑みをもらしました。

てんとう虫コミックスドラえもんプラス 第4巻』小学館 第2話目「『チャンスカメラ』で特ダネ写真を…」

土管
写真=iStock.com/jirapongb
※写真はイメージです

効率化の時代でも“泥臭さ”は残っている

決定的瞬間をつかむために、いつもポケットカメラを持ち歩き、それなりの心がまえでいる……というところが、いかにもスネ夫らしいですね!

「運というのは、つかむべく努力している人のところへ訪れてくる」という、衣笠祥雄さん(故人・元広島カープ選手、国民栄誉賞受賞)のことばがあります。スネ夫のスクープは、まさに努力のたまものと言えるでしょう。

高度に効率化されたように見える現代ですが、合理的なプロセスだけでは実現できない仕事が、実はまだたくさん残っています。その代表的な例が「マスコミの取材」や、「スクープを飛ばすこと」ではないでしょうか。

テレビや新聞、雑誌などのメディアでは、旬のタレントやスポーツ選手、政治家などに取材の依頼をします。ですが、そのすべてがただちに快諾されるわけではありません。大物になればなるほど、出演(取材)交渉は難航します。そこで、なんとか応じてもらおうと、どの媒体もコネを頼ったり、ご機嫌をとったりするわけです。

たとえばスポーツ雑誌のライターなどは、数か月、場合によっては数年間、選手の練習の現場に足を運び、だんだんと親しくなるものだと言われます。