「要約できる人」は、仕事ができる

東大入試の特徴的な問題に、英語の要約問題があります。

英文を読み、その内容を70~80字の日本語にまとめる。形式だけ見ると、シンプルな問題に見えます。しかし実際には、非常に高度な総合力が求められます。

まず、英文を正確に読まなければなりません。次に、段落ごとの役割を把握する必要があります。どの情報が中心で、どの情報が具体例なのかを見極めなければなりません。そして、限られた字数の中で、必要な要素を過不足なく入れる必要があります。

これは、まさにビジネスの中核スキルです。

長い報告書を読んで、上司に要点を伝える。会議の議論を整理して、次に決めるべきことを示す。複雑なプロジェクトの状況を、経営陣に短く説明する。顧客の発言の中から、本当の課題を抜き出す。

どれも、要約力が問われます。

要約とは、単に短くすることではありません。

本質をつかむことです。

情報を短くできる人は、情報の構造が見えています。何が中心で、何が枝葉かを判断できています。逆に、すべてを同じ重さで並べてしまう人は、どれだけ知識があっても、相手に伝わる形にできません。

情報過多の時代には、情報を持っている人よりも、情報を編集できる人の価値が上がります。

AIが大量の情報を出してくれる時代だからこそ、「結局、何が大事なのか」を見抜ける人が必要になるのです。

AIは答えを出すが、問いは立ててくれない

AIを使えば、かなり多くの作業が楽になります。

文章を要約する。アイデアを出す。論点を整理する。表を作る。メールを書く。こうした作業は、すでにAIが得意とする領域です。

しかし、AIに何を聞くべきかを決めるのは人間です。

そもそも、何が問題なのか。どの前提を疑うべきなのか。どの情報を重視すべきなのか。複数の選択肢のうち、どれを採用すべきなのか。

ここには、判断が必要です。

そして判断には、責任が伴います。

AIが出した案を採用して失敗したとき、「AIがそう言ったからです」とは言えません。最終的に、その案を選んだのは人間だからです。

だからこそ、AI時代に必要なのは、AIより多くの知識を暗記することではありません。AIが出した知識を読み解き、自分の文脈に合わせて使い、最終的に判断する力です。

ブレインストーミングセッションを行うスタートアップチーム
写真=iStock.com/cofotoisme
※写真はイメージです

東大・京大の入試問題は、この力を鍛える格好の素材です。

東大は、大量の情報の中から本質を素早く抜き出し、限られた時間で答えにする力を問います。京大は、すぐには答えの出ない問いに向き合い、文脈を深く読み、自分なりの論理を組み立てる力を問います。

どちらにも共通しているのは、知識を持っているだけでは突破できないという点です。