大企業のエリート社員が引き起こす暴力犯罪や性犯罪が後を絶たない。その背景にあるスーパーエリートの心象風景を探った。

「近頃、酒の量が増えたよなぁ」

机の下でイライラと貧乏ゆすりをしながら、Aさん(43歳)は呟いた。そもそもそんなに酒が好きなわけではなかったのに、毎晩飲まずにいられなくなってしまった。しかもウイスキーや焼酎のストレートのように、強くなければ“利かなく”なってきたのを感じている。

一流大学を卒業し、ある一部上場企業の課長職にあるAさんは、ストレスの原因を自覚している。1カ月前、同じ部にいる人柄がいいだけの同期が、先に次長に昇進してしまったのだ。部長は絶対に自分のほうを評価してくれていると信じていただけに、ショックが大きかった。

3週間前、「人に先を越されたって、別にいいじゃない」と妻に言われた瞬間、カッとして思わず横面を張り飛ばしてしまった。生まれて初めてのことだったので、ひどい自己嫌悪に陥ってしまい、その日から家にまっすぐ帰るのが嫌になった。酒量が増えたのは、そのせいもある。

2週間前、会社への復讐、というわけではないが、カメラが趣味のAさんは、自分の机に小型のビデオカメラを仕込んで、退社後のオフィスを撮影してみた。誰にも気づかれなかった。自分が退社した後のオフィスの様子を再生していると、覗き見に似た興奮が味わえた。

先週の日曜日、わざわざ休日出勤をして同じビデオカメラを女子更衣室に仕込んだ。回収してみると、以前から気になっていたB子が映っていた。B子が制服に着替える姿を再生していると、退社後のオフィスの様子を見るのとは桁違いの興奮に襲われた。

今週、AさんはB子を待ち伏せして尾行してみようと考えている……。