過保護というと“愛されすぎ”の印象があるが、自己愛の強い人は単純な愛されすぎではない。たとえば、親に構ってほしいときに欲しくもない高額なおもちゃを買い与えられたり、家事の手伝いをしたことを褒めてほしいのに、テストの点数がよかったときだけ褒められるというように、欲している愛情と与えられる愛情がちぐはぐな環境下で育ったとき、自己愛の強い性格が形成されやすいという。

つまり性犯罪者は、必ずしも貧乏だとか親がアル中だというような、一般的に劣悪と考えられている家庭環境で育つとは限らないのだ。傍から見れば、むしろ裕福で教育熱心な家庭の出身者である可能性もある。「まさかあの人が」という犯罪者が誕生する原因のひとつは、ここにあるわけだ。

盗撮などという惨めな犯罪を犯してしまったスーパーエリートの姿が、ちぐはぐな愛情を注がれ続けた子供の末路だとしたら、哀れに思えなくもない。

また、自己愛の強い人格と同様、性犯罪に走りやすいと考えられているのが、最近注目を集めている、発達障害の傾向を持つ人物である。

アスペルガー症候群も発達障害の一種だが、知的障害を伴わないケースも多いため、職場では障害者ではなく「ちょっと変わった人」といった扱いを受けている場合もある。また、発達障害にはスペクトラムといって、健常者と発達障害者の中間に位置する人も多いため、本人も周囲も発達障害の傾向を明確に認識していないケースもままある。

福井氏によれば、外側から見えやすい発達障害の特徴は、場の空気が読めないことだという。

「発達障害の診断基準は、社会性の障害、コミュニケーションの障害、興味の偏りの3点です。宴席で突然変なことを口走って周囲をしらけさせるような人は、発達障害の傾向があるかもしれません」