90年代の演出をいまだに使う
少し性質は違うが、「CMまたぎ」についても不満の声を聞くことがある。CMに入る直前、クイズの正解やトークのオチをピーという音やテロップで隠して視聴者を焦らす演出である。
CM中にチャンネルを変えさせないようにする対策として、これも1990年代くらいから一般的になった印象だ。「ガチンコ!」(TBSテレビ系)の「ファイトクラブ」では、不良同士が一触即発になると「一体どうなってしまうのかっ⁉」と仰々しいナレーションが入り、その結末はCM明けでないとわからないというようなパターンが繰り返された。
そう考えると、ワイプやテロップもそうだが、1990年代を境に一連の演出手法が定番化していったのがわかる。だがそれから数十年という時間が経過し、そうした演出へのフラストレーションが顕在化してきた。
テレビ番組をめぐる主導権の交代
背景には、テレビ番組をめぐる主導権の交代があるだろう。
まだ家庭用ビデオデッキもなかった時代、テレビ番組はリアルタイムで見るしかなかった。その場合、視聴者は受け身の立場。放送時間に合わせてテレビの前にいなければならない。主導権はテレビの側にあった。
だがいまやテレビ番組は録画したり、後からTVerやサブスクなどで見たりできるものになっている。むろんスポーツのように生中継に限るような場合もあるが、大きく主導権が移り、視聴者が自由に見る時間を選択できる時代になった。
その結果、テレビを見る際に不自由さを感じさせるものに対し、視聴者はますます敏感になった。その象徴が、ワイプでありテロップであり、はたまたCMまたぎなのではなかろうか。
些末なことに思えるかもしれないが、そこには意外にいまのテレビが抱える本質的な問題、時代とのずれが現れているように思う。

