演出側の意図が窮屈に

ただ、ワイプへのこうした声は、ドリフの番組だけに限らない。4月に放送された「月曜から夜ふかし」(日本テレビ系)の街頭インタビューに登場した年配の男性も、「ワイプはいらない」と熱弁していた。

「今のね お笑いつまらない」と語る男性は、ワイプが「邪魔でさ」と言い、さらに「ワイプがさグズグズしゃべるんだよ」「あれが大っ嫌いなのよ俺」「ちゃんと見させてくれよ」「助言はいらねえよテメェの」「俺画面見てるんだから」と怒り心頭。イライラするので、テレビ画面の上のワイプが出ているところに自分でティッシュをかけて隠していると言っていた。

ここまで毛嫌いする人はさすがに珍しいだろう。だが、この男性が、ワイプに「ここが驚くポイント」「ここが笑うポイント」と指示されているような感覚、番組の見方を半ば強制されているような感覚になってイライラしているというのは紛れもない事実だ。

実際、ワイプからは、視聴者にしてほしい理想的な反応を先取りするという演出側の意図が読み取れるときもある。ただ、そうされると逆に窮屈と感じるひとがいてもおかしくない。

起源となった日テレ番組

そもそもワイプを使った演出はいつ頃から始まったのか? 以前、ある情報番組が調査していたのでそれを紹介しよう(読売テレビ「す・またん!」、2023年6月15日放送)。

技術自体は昔からあって、番組でも使われていた。たとえば「オールスター水泳大会」のような番組で、競技をしている画面の片隅にワイプを出し、そのなかでアイドル歌手が歌っていたことを覚えているひともいるだろう。

ただ、この場合のワイプは出演者のリアクションを見せるためのものではない。現在のようなワイプの起源とされるのが、1990年代初頭に始まった「世界まる見え!テレビ特捜部」(日本テレビ系)である。

収録の1回目に、演出スタッフは20分にも及ぶドキュメンタリー映像を見せたいと考えた。すると上層部からクレームがきた。

ご存じのように、レギュラー出演者にはビートたけしがいる。たけしは指折りの人気タレントで視聴率も期待でき、それだけ高額なギャラももらっている。そのたけしを20分間も画面に出さないとは何事か、というクレームだった。

そこでスタッフは、苦肉の策に出る。ドキュメンタリー映像の片隅にワイプを出し、たけしのリアクションを見せることにしたのである。それをきっかけに、この手法は定着していく。

映画『HANA-BI』がベネチア国際映画祭グランプリ。金獅子賞を手に喜びを語る北野武監督。左は森プロデューサー(=1997年9月9日、千葉・成田空港)
写真=時事通信フォト
映画『HANA-BI』がベネチア国際映画祭グランプリ。金獅子賞を手に喜びを語る北野武監督。左は森プロデューサー(=1997年9月9日、千葉・成田空港)