9割以上の問題は解く必要がない

私の経験では、世の中で「問題かもしれない」とされていることのうち、今本当に解決しなければならないイシューは2~3%くらいだ。

では、ある問題がイシューたりえているか否かは、どうすれば見極めることができるだろうか。

まずはイシュー出しをする前に、「そもそも何に答えを出すためにこのような課題に取り組んでいるのか」を明確にする必要がある。課題が出てきた文脈、背景を明らかにする作業と言い換えてもいい。

C社の例で言えば、神保社長が坂崎室長に課題を与えた理由は、さほど明確ではない。後追い体質を改善すべきというのか、業界3位を死守せよというのか、それとも先制攻撃を成功させたいだけなのか……。

このように課題に取り組む理由が不確かなため、思考が前に進まないのである。「何のために」をはっきりさせようとすると、時間軸を盛り込むことも大切だ。たとえば、「来期もシェア争いでD社に勝つため」のイシューであれば考えようがある。

こうして「何のために」が明確になり、イシューらしきものが見つかったら、「それを解決できたらいったい何になるのか、何が変わるのか」を考える。「それがわかったところで、何も変わらない」のであれば、それはイシューのように見えて、実はイシューではない。

たとえば、「なぜいつもD社に出し抜かれるのか」という問いを立てても、坂崎室長の言うようにレポートの核は「それは社風だから」で終わってしまうだろう。C社の機動力がD社と比べて劣ることは自明のことであり、機動力を上げようと思ったら、会社組織を総入れ替えするか、長い長い時間をかけて徐々に社風を変えていく以外にない。「それは社風だから」という解にみんなが、「その通り!」と納得したところで、何も変わりはしないのである。