Q.大手電機メーカーA社の経営企画室で働く立花君(38歳)。ハーバード大学大学院でMBAを取得した切れ者だが、他部門からの評価は辛口だ。「確かに立花の言うことは立派だが、口だけで結果を出せていない」「俺たちはいいものをつくっているのに、それを生かしていない」「現場のことが何もわかっていない」などなど。今期、A社は赤字に転落。立花君は、いよいよ起死回生の戦略を提案しなければならなくなった。
追いつめられた立花君が失地回復するには、スティーブ・ジョブズに学ぶのがいいでしょう。立花君のような現場感がなく、頭でっかちな人には、ジョブズ思考の特徴である「現地・現物主義」「問題に気づく力がある」「意思決定のスピードが速い」の3点が参考になるはずです。
まず「現地・現物主義」。これは私がずっと取材をしてきたトヨタで言われている言葉で、「どんなことでも現物や現地を見て判断するべきだ」という意味です。ジョブズはまさにそれを実行していました。ジョブズは泥臭いやり方が好きで、昔から新製品のアイデアを検討するときは、頭の中で考えるだけでなく、必ず膨大な数の試作品をつくるのです。社員が新商品のアイデアを出すと、もちろんけなすこともあるけれど、「そうか、じゃあつくってみてくれ」「形にして見せてくれ」と言う。
マッキントッシュのケースだけでも十数種類の試作品をつくるし、アップルストアのような実店舗ですら、設計図だけで判断せず、本物の店舗と同じ空間を巨大な倉庫内につくりあげています。そのうえでその設計を白紙に戻したりもするのです。