授業はすべてiPad、始業時間も学年分けもなし――。そんな先端的な初等教育の試みが、オランダで始まった。
4歳から12歳までの子供が通うその学校の名は、「スティーブ・ジョブズ・スクール(SJS)」。もちろん、いまは亡きアップル社の共同創設者の名にちなんだものだ。運営母体はO4NTという同国の非営利団体。2013年9月に、まずはアムステルダムなど6都市で7校が開校。来年の夏までには計12校で同様のプログラムが展開される予定だ。
どんな授業が行われるのか。カリキュラムの基本は他の学校と同様、オランダの文部科学省が定めた58の学習目標。ただし一斉授業はなく、子供たちは教師の助言を受けながら、取り組む学習目標を選び、自分のペースで個人的、あるいはグループでの課題をこなしていく。
1人1台ずつ配られる特製ケース入りのiPadは、学習や発表用の各種ソフトに加え、児童同士や教師とのコミュニケーションツール、課題の進行状況やスケジュールを管理するアプリなどを満載。家庭学習のときも、学校にいるときと同じ学習環境が常に手元にある仕組みだ。
誰がどんな課題に取り組み、どこまで進んでいるか、教師はいつでも手元の端末から確認でき、それをもとに助言やサポートを子供たちに提供する。親もわが子の学習状況を、自宅や出先から随時把握できる。学校は午前7時半から午後6時半まで開いており、午前10時半から午後3時までのコアタイムを守れば、いつ登下校してもいい。
オランダではもともと、初等教育の自由度が非常に高い。小中学校の約7割は私立校で、学区の縛りもなく、各校が独自の教育方針やカリキュラムを競っている(国の補助で、公立・私立を問わず授業料は無料)。一方で小学校でも落第があり、卒業時には国の共通学力テストがあるなど、一定の学力水準を確保する工夫もなされている。
SJSのような学校が生まれたのも、こうした環境があったからこそ。日本の小学校にも、もう少し柔軟性が欲しくなる?