数式は言葉です
黒いサングラスにロングヘアと、まるでロックミュージシャンのような苑田尚之先生が教えるのは物理。東進ハイスクールのCMの「数式は言葉です。計算じゃない」という言葉に象徴される通り、物理学の本質を学べる授業は、支持者が多数。「基本法則だけですべてを説明する考え方に圧倒された」「物理が楽しくて仕方なくなりました」(ともに東大合格者)という声もあり、東大の理系や医学部合格を目指す超ハイレベルの生徒たちからの絶大な信頼を得ている。めったに取材を受けない苑田先生が、今回インタビューに応じてくれた。
私が理科好きになったきっかけは、宇宙への興味です。生まれ育った長崎県の島原半島は自然豊かな場所で、美しい夜空を眺めているうちに、宇宙の果てがどうなっているのか知りたくなったのです。小学生のころから大人用の天文学の本を図書館で借りて読み、天体観測もしました。普段はねだっても物を買ってくれない親が珍しく天体望遠鏡は買ってくれたのです。
私は自分から理科的な興味を持って深めていった子供だったので、お子さんを理科好きにさせたい親御さんには私自身の経験は何も役に立たないかもしれません。
ただ子供が理科好きになるかどうかは、本人がどこまで興味を持てるかに尽きると思います。そして、教える人がどれだけ深い興味や理解を有しているかによって、子供の感じ方は大きく左右されると思います。
小学生に授業をするならテーマは「宇宙」
私の授業を「面白い」と感じてくれる生徒が多いのは、私自身、物理が好きで、物理に対する愛情と理解のもとに授業をしているからだと思います。授業では、受験で必要な知識だけでなく物理の根源的な話もします。あくまでも「物理学の美しさと面白さ」を伝えるのが基本で、生徒を楽しませるような特別な工夫や準備はしません。だから今回の取材でどうやって生徒のやる気を引き出しているのかと質問されても、答えようがありません。今は東大や医学部を目指すようなレベルの生徒を対象に教えていますが、かつてはいろいろなレベルの生徒を教えていました。学生時代には小学生を教えたこともあります。学力に合わせて難易度は変えますが、自分が面白いと思うことを話すのは同じでした。それでもどんな年齢のどんな子でも、私の授業に何らかの面白さを感じてくれていたようです。