論理的思考ではなぜ、ダメなのか

「ずるい」という言葉にはあまりいいイメージがありません。でも「ずるい」にはいろいろな「ずるい」があります。人を出し抜いて非難されるような「ずるい」もあれば、思いがけない発想で、周囲を悔しがらせる「ずるい」もあります。今回は常識に囚われず、ちょっとした発想の転換で楽にゴールに到達できるような「ずるい」仕事の方法をご紹介したい。

iPhoneを世に送り出したスティーブ・ジョブズ、iPS細胞をつくった山中伸弥教授。2人の世紀の大発明のベースには、ラテラルシンキング(水平思考)という発想がありました。

ラテラルシンキングとは、「ずるい発想法」のこと。例えば一休さんのとんちもラテラルシンキングの一種で、発想の枠を広げる思考法とも呼ぶべきものです。

漠然としていてわかりにくいかもしれませんが、ロジカルシンキング(垂直思考・論理的思考)と対比して考えるとわかりやすいかもしれません。

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固定観念からいかに脱するか

論理的な思考とは、A→B→Cというように物事に筋道を立てながら正解を導く考え方です。待ち合わせが正午ならば、11時50分までに最寄り駅に到着しなければならない。そのためには、11時に会社を出る必要があるので、早めに用意をしよう……という具合に考えていくことです。論理的思考は、日常的に用いる当たり前の考え方なので、気づかないうちにそのワナにはまってしまうビジネスマンが多いようです。

常識や経験から、妥当だと思われる「正解」を導くためにロジックを掘り下げていく方法は、私たちの考える力を奪ってしまいます。日本の携帯電話端末がいい例でしょう。テレビ機能のついた携帯とついていない携帯なら、ついていたほうがいいだろう。カメラも高性能のほうがいいだろう……と各メーカーが考えた結果、すべての携帯が同じ機能、同じようなデザインになってしまい魅力も薄れていきました。これはロジカルシンキングの失敗と考えてもいいでしょう。しかし、ジョブズはまったく違う発想をしました。日本のメーカーが必死で市場調査をし顧客の嗜好を分析しているときに、ジョブズは「自分だったらこういう携帯があったらいいな」とほとんど前提条件もないまま自由に発想したのです。