機能やデザインをなるべくシンプルに、よりシンプルにと絞っていきました。そして、「お客さんがやりたいことをすればいい。それぞれが自分の好みに応じてカスタマイズするべきだ」と考え、利用者が後からアプリケーションを入れていく方法にしたのです。

山中教授も常識に囚われない発想ができる人です。山中教授によってiPS細胞がつくられるまでは、ES細胞と呼ばれる再生細胞がありました。しかしES細胞は卵子など倫理的に問題のあるものからしかつくれなかったのです。その点iPS細胞は、人間の皮膚や血液から再生細胞をつくれるようにした。これまでの研究成果をあえて使わずに、横にヒョイと跳んだのです。

普通であればこれまでの成果を深掘りするだけで、思考の幅を横に広げることができません。2人とも、それまでに成功事例があっても1回捨ててしまうことができる。あちらこちらに思考を飛ばすことで失敗も多くなったでしょう。当たるかどうかわからないのですから。

固定観念を徹底的に疑え!

スティーブ・ジョブズ(ロイター/AFLO、時事通信フォト=写真)

しかし、世の中はやってみないとわからないことが多いのです。ロジカルシンキングの場合は、成功例を参考にして、それを改良するだけ。ですから当たるのはわかっていますけど、大成功にはなかなかならない。野球でいえばバントのようなもので、ランナーを進めることはできてもホームランには絶対にならない。反対に「こんな球、打てるわけがないじゃないか」と言いながらもバットを思いっきり振るのがラテラルシンキングなのです。

ジョブズはスタンフォード大学の卒業式のスピーチで、こんなことを言いました。

「未来を見通すことはできない。むしろ、過去を振り返って、経験から点と点を結びつけ、何らかの形をつくることが重要だ」

失敗もするだろうし、成功もするだろうが、そういった経験はすべて点であり、そうした点を後からどう結びつけられるか考えなさいということ。

ジョブズ自身、せっかく入学した大学を学費がもったいないからと1年もせずやめてしまいました。でも「卒業のために必須科目を受ける必要はなくなったから、自分がおもしろそうだと思う授業だけは受けよう」とモグリの学生を続けるんです。