Q経営コンサルタントの凸凹研究所は、福島在住の有志からなる市民団体「再生ふくしま」からミッションを与えられた。政府から与えられた未来ではなく、本来の福島が目指すべき未来はどんな姿か、長期的なビジョンとプランを提案してほしいというのだ。「30年後の福島を考える」プロジェクトチームに任命された7名は頭を抱えた。地域の未来という大きな構想を練っていくには、一体、どんなアプローチが有効なのだろうか?

被災地を元の状態に戻す“復旧”と違い、“復興”には「未来に向けてこういう街をつくりたい」というビジョンが必要だ。もしあなたが未来の福島についてビジョンを策定するなら、どのようなアプローチが適切だろうか。

過去にとらわれず、未来志向で物事を考えるには、ファンクショナル・アプローチが有効だ。ファンクショナル・アプローチは1947年にGE(ゼネラル・エレクトリック)社のローレンス・マイルズ氏によって開発された問題解決手法で、ものづくりの世界では広く活用されている。

最大の特徴は、物事をカタチではなくファンクション、つまり目的、狙い、効用、機能でとらえることにある。たとえば紙コップをもっと便利なものに改良するとしよう。紙コップをカタチでとらえると、目に見える形状や材質から発想することになりがちだ。一方、ファンクションでとらえるとどうなるのか。紙コップには「飲み物を運ぶ」「温度から手を守る」といったファンクションがある。カタチから離れてこれらのファンクションに立ち戻って考えれば、現在の形状や材質にとらわれない画期的なアイデアが生まれてくるかもしれない。ファンクショナル・アプローチは、このように「モノ離れ、コト離れ」をして、既成概念や先入観から逃れたところから問題を見つめていく思考法といえる。