「スマホでバカになる」は本当か
近年、スマホやデジタル教科書の普及が若者の学力に悪影響を及ぼしているという議論がある。
東北大学加齢医学研究所の川島隆太教授らが中学生約7万人を対象に行った研究(プレジデントオンライン「研究者が思わずゾッとした『子どものスマホ使用時間と偏差値の関係』小中学生7万人調査でわかった衝撃の事実」2023年5月14日)によると、スマホの使用時間が長くなるほどテストの偏差値が下がっていた。
ただし、スマホに限らず、たいていどんな活動でも長時間に及ぶと学力に負の影響がある。スポーツやゲームだけでなく、読書でさえそうだ。これは「常識」として知っておいてもらいたい。
また、デジタル教科書導入の先進国であったスウェーデンでは、見直しに取り組んでいるとされる。
デジタル教科書を導入した後の2012年に、経済協力開発機構(OECD)が実施する「OECD生徒の学習到達度調査」(PISA)での成績が急落したことがその背景として指摘(BBC News Japan「紙の教科書への回帰……スウェーデンはなぜデジタル教材から離れているのか」2026年4月17日)されている。
ただ、これらの議論や動きは物事の一面しか捉えていない。
実際、「紙回帰」「アナログ回帰」していると日本で語られがちな北欧は、ディスレクシア、ディスグラフィア(書くことに困難がある人)に対し、デジタルツールも用いたアクセシビリティ対応が世界でもっとも充実した地域のひとつである。
アクセシビリティとは、視覚や身体・学習面などにハンディのある人も含め、誰もが読みたいコンテンツに無理なくアクセスし、利用・操作できるようにする考え方と実践のことだ。
学習障害の子どもの教育環境が向上
アクセシブルな本の具体的なかたちとして、日本では、
・「点字図書」
・ナビゲーション機能付きのデジタル録音図書「デイジー(DAISY)」
・やさしく読める、わかりやすく書かれた「LLブック」
などが代表的なものとされている。
一方、北欧諸国ではアクセシビリティ対応の一環としてデジタルコンテンツの利用が進んでいる。ディスレクシアの子たちは普段の学習や試験において、デジタル教科書やCBT(コンピュータベースのテスト)用のソフトウェアに標準装備されている、文字の読み上げ機能やフォントの変更・拡大などの支援ツールを日常的に使っている。
つまり、学校現場におけるデジタルコンテンツの利用、デジタル教科書の普及により、学習障害を持つ子どもの教育環境が確実に向上したわけだ。
これらは家庭におけるスマホの普及や過度な利用とは分けて捉えられなければならない。

