「トラック新法」で運賃上昇
ほかにも政府の進める政策が、書店の経営を悪化させる見込みがきわめて高い例がある。
物流業界の待遇改善を図り、人手不足を解消することで持続可能な産業にするための法整備の一環として2025年6月に公布されたいわゆる「トラック新法」がそうだ。
この法律は早ければ2028年6月には施行される。運賃・料金が国の定めた適正原価を継続して下回った発注を行うと、その荷主は違法とされるため、この「トラック新法」の施行により大幅な運賃上昇が見込まれている。
もちろん、トラック新法によりトラック運転手の待遇改善が見込まれるなど、好ましい影響もあるだろう。多くの業界では、運賃が上昇した分を商品価格に転嫁して請求できるからだ。
だが出版業界ではそうはいかない。取次や書店には本の最終小売価格の決定権が原則的に存在しない。決めることができない。出版社が決めた価格で本を定価販売する契約(再販契約)を出版社、取次、書店のあいだで結んでいるからだ。
書店経営が詰んでしまう
トラック会社から「運賃を上げてくれ」と言われるのは直接的には取次だ。多くの出版社はトラック会社と直接は取引していないからだ。
したがって、運賃上昇を実感しづらく、結果として本の価格に転嫁(反映)しにくい。
この対策として、取次は出版社に、運賃協力金というかたちでの負担を求めている。トーハンは2026年4月に出版社に対して「新しい契約条件を仕切り直す」と公言した。
ただ、取次の話は本題ではないのでこれ以上は深入りしない。
問題はやはり地方の書店だ。
通常、本の返品運賃を負担するのは書店だが、先述の通り、書店には本の価格決定権がないため、本の値段に運賃上昇分を転嫁できない。
そのため、運賃が上がった場合、書店が負担する本の返品処理にともなう費用も増加してしまう。
トラック運賃の上昇対策として、出版社が本の価格を値上げしたとしても、出版社だけがギリギリ利益を確保できる程度の値上げしかしないことも考えられる。その場合、これまでと同じ冊数の本が売れたとしても、書店には、売上金額の上昇をはるかに超える運賃上昇(コストアップ)が押し寄せるため、書店経営が詰んでしまう可能性がある。

