どちらに転んでも地獄が待っている
つまり、高市政権が進める物流網維持のための政策のしわ寄せで、街の書店が死ぬことになるのだ。
「だったら書店は出版社との再販契約をやめたらいいのでは?」と思うかもしれない。
だが、現状で「本の定価販売をやめます」となったら、Amazonのような資本力のあるネット書店が本の大幅値下げに踏み切る。その結果、やはり街の書店は価格競争に負け、やはり激減してしまうだろう。
(もっとも、再販契約はあくまで個別の会社同士の契約だから、出版社がAmazonにだけは定価販売でないと卸さないことも理屈上は不可能ではないが、現実的な想定ではない)。
書店にとっては、どちらに転んでも地獄が待っている。
図書館には値引き販売が当たり前
文科省は2025年に「書店と図書館の連携」を打ち出した。
これに対する書店側の期待として「図書館が本を買う場合は地元の書店から買う」「値引きなしの定価販売」「装備費別途請求」がある。
逆に言えば、「一般競争入札で納本事業者を決めているために地元書店が落札できない」「図書館への本の販売は割引が当たり前」「本を図書館で使えるようにするためのバーコード付与やラミネート加工などの『装備費』は納本事業者側が負担」という自治体が珍しくない。
本は定価販売じゃないのか? なぜ図書館には割引して売っているのか? と思った人もいるだろう。
地方自治法では、税金で何か買う場合には公正・公平・効率的に使うことを求める原則が定められている。少額の場合など、いくつかの例外を除いては基本的に入札で決めるという規則になっていることが多い。
たとえば建設業者が公共事業の入札に対してみんな価格横並びで応札したら、いかにもカルテルのにおいがするはずだ。
そこに書店だけ「いやいや、われわれは、価格は一律横並びで値引きはしません」と主張してすんなり理解が得られるような役所や地方議会ばかりではないし、なにより公正取引委員会に目を付けられる。
そういうわけで、長いあいだ再販契約書には、官公庁等に入札した場合は値引きを認める内容の文言があった。
しかし本屋の販売マージンはただでさえ低い。中小書店が値引きをして装備費も負担したら儲けにならず、事業としてサステナブルではない。

