在庫リスクは少ないが上振れしない構造だった
「ガシャポン」は2024年度の売り上げ実績により、「カプセルトイ世界売上No.1ブランド」としてギネス記録に認定されました。これほどの事業へ成長したことに、我々自身が最も驚いています。
バンダイ社長
1964年、千葉県生まれ。87年城西大学経済学部卒業後、バンダイ入社。ベンダー事業部ゼネラルマネージャー、BANDAI SPIRITS常務取締役などを経て、2021年4月より現職。
私がガシャポンを担当するベンダー事業部長だった15年ほど前、毎月作る商品の点数は25点程度でした。売り上げは社内10部門中6位前後をうろうろしていて、真ん中よりも下。社員一人あたりの利益では2位だったので、「効率の良さを誇ろう」とよく部員を励ましていたものです。
しかし、2020年代に入って景色が一変しました。現在、毎月作る商品点数は120種類以上と約5倍に急増。売り上げは当時の1年分をわずか2カ月で稼ぎ出しています。バンダイナムコHDのトイホビー事業が8期連続で過去最高売り上げを更新する中で、大きく成長したのがガシャポンです。
業界全体も活況で、弊社調べでは、2020年には385億円だった市場規模が、2025年には1700億円を記録しました。わずか5年で4倍以上の急成長。その間、ガシャポンはシェアの半数を握り続けています。
なぜ、これほどの成長が実現できたのか。最も大きかったのは、カプセルトイの専門店が広がったことです。
かつて、カプセルトイ事業は成長させるのが難しいビジネスだと考えられていました。ガシャポンの流通モデルは、当社がカプセルトイ自販機とカプセルトイを問屋さんに卸し、オペレーターと呼ばれる方たちが自分の「縄張り」に自販機を設置する委託モデル。オペレーターさんは2週間に1回ほどの頻度で設置した自販機を巡回して商品を補充し、代金を回収します。
一度卸した自販機はオペレーターさんのものですから、バンダイ以外の商品も自由に入れることができます。このため、我々はどこに自販機が置かれているかも、どの商品が何個売れたかも、正確に把握できていませんでした。
しかも「売れすぎる商品」を出しても、いい顔をされません。商品がすぐなくなると、頻繁に補充する必要があるからです。在庫リスクがあるので売れない商品は困るし、かといって売れすぎる商品も手間が増えて困る。
商品の生産量もオペレーターの方々からのフィードバックを基に決めていましたが、情報の粒度が揃わない。ほとんど「勘と度胸」で決めていました。売り切り御免方式なので在庫リスクは低いものの、裏を返せば大きく上振れもしない構造になっていました。
お客の顔が見える直営店商品開発が激変した
そんな状況の中で、2010年代にカプセルトイの専門店が登場します。それまでカプセルトイ自販機は店舗の一角や商業施設の通路に設置するのが主流でした。多くのカプセルトイの自販機を取り揃えた専門店は、商品をたくさん並べてもらえるうえに、減った商品の補充もすぐできます。
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