定年後の夫が「旅行」を嫌がるワケ

奥さんたちは元気いっぱいで「今日はどこを観光しようかしら」「何を食べようか」「あれも買いたい、これも買わなきゃ」と貪欲に楽しもうとするのに対して、男たちはみんな「早く家に帰って、のんびりしたい」という顔をしている――。

男性のほうが旅行に消極的なのは、女性よりも前頭葉の萎縮が進んでいるからだろうと私は思います。

和田秀樹『老人は「キレる」くらいでちょうどいい』(集英社インターナショナル)
和田秀樹『老人は「キレる」くらいでちょうどいい』(集英社インターナショナル)

というのも、この話に出てくる年代の夫婦の多くは、妻が専業主婦、夫は定年退職後の元サラリーマン。妻はずっと「現役」ですが、夫は定年を境にそれまでフル回転させていた前頭葉をあまり使わなくなっています。脳にかぎらず、人間の身体は使っていないと衰える。長く入院していると足腰が弱るのと同じように、前頭葉も使わないと老化が進むのです。

先述したように、前頭葉が萎縮し、意欲が低下していけば実際問題として運動能力も低下します。ことに歩く力が衰えていけば近所のスーパーに出かけるのさえ億劫になっていき、新しい刺激を受けることが減って好奇心がますます衰えていきます。体力の衰えを理由に、旅行をすることも避けるようになるでしょう。

こうなると、いわば「老化の負のスパイラル」に入り込んでしまうわけで、心の衰えは身体の衰えを惹き起こし、身体の衰えは心の衰えを加速させていくのです。

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