「豊臣兄弟!」(NHK)では織田信長(小栗旬)が自分を裏切った浅井長政(中島歩)の小谷城を落とす場面が描かれた。歴史研究者の濱田浩一郎さんは「江戸時代初期に成立した『信長公記』には、信長が勝利後、長政と父親らの髑髏(どくろ)を酒席に出したとある」という――。

信長は長政の裏切りを信じられず

大河ドラマ「豊臣兄弟!」(NHK)において浅井長政を演じているのは、中島歩さんです。長政は織田信長(小栗旬)の妹・お市(宮﨑あおい)の方をめとり、織田家と結んでいましたが、元亀元年(1570)、突如として信長に反旗を翻します。

『信長公記』(信長の家臣・太田牛一が著した信長の一代記)には、信長が長政裏切りの知らせを「虚説」として信じようとしなかったことが記されています。

信長としては、長政は縁者であるし、北近江の支配も任せているのだから、何の「不足」(不満)もあるはずはない、裏切るはずはないと信じ込んでいたのです。信長が長政の裏切りを「まさか」と思ったように、現代においても歴史家は長政の離反について確固とした説を提示できていません。

織田信長の銅像・愛知県の清洲公園
織田信長の銅像・愛知県の清洲公園(写真=Bariston/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons

長政謀反の理由はいまだに不明

越前国の朝倉氏(義景)との同盟を重視したからではないかという説(しかし同説は、浅井氏と朝倉氏は累代の深い関係になかったとして現在は疑問視されています)。信長から課せられる絶え間なき軍役・動員に浅井氏が疲弊したからではないかという説(同説も浅井氏は信長からそれ程、過重な軍役を課せられてはいないとして疑問が出されています)。このように長政の裏切りについて定説はないのです。

長政は信長から離反した後、朝倉氏や比叡山延暦寺、または甲斐国の武田信玄などと連携し、信長を大いに苦しめることになります。信長は自らに刃向かった者に対する憎しみを募らせ、その恨みや憎しみを晴らそうとするところがあります。信長は前述したように「長政が裏切るはずはない」と信じていただけに、長政への恨みは倍増したと思われます。