秀吉と仲が良いお市像の新しさ
大河ドラマ「豊臣兄弟!」(NHK)で織田信長の妹・お市は宮﨑あおいさんが演じています。これまでの大河ドラマでも多くの女優がお市を演じてきました。例えば1981年放送の『おんな太閤記』では夏目雅子さん、1996年放送の『秀吉』では頼近美津子さん、2002年放送の『利家とまつ 加賀百万石物語』では田中美里さん、2023年に放送された『どうする家康』では北川景子さんがお市を演じてきました。これまで筆者も多くの大河ドラマでお市を観てきましたが、お市は豊臣秀吉を「猿」などと呼び嫌悪しているパターンが多かったように思います(一方で秀吉はお市に想いを寄せる描写もあったように思います)。
しかし今回の「豊臣兄弟!」はそうではなく、お市と秀吉が仲良く語り合っていました。最初からお市と秀吉との関係を険悪に描くのかと筆者は勝手に予想していましたので、その予想が見事に覆されて斬新で面白かったです。では実際、信長の妹・お市とはどのような女性だったのでしょうか。
お市が生まれたのは一般的に天文16年(1547)とされますが、はっきりしたことは分かりません(享年が37歳と伝わることから、そこから逆算すると生年が天文16年になるということです)。名前についても、われわれはよく「お市」と普通に呼んでいますが、実名は信頼できる史料には記されておらず、不明です。当時の女性の実名は分からないことが多いのです(例えば信長の正室はよく濃姫と呼称されますが、彼女の実名も不明です)。
兄・信長とはひと回り違った?
さて、お市の父親は織田信秀であります(お市は信秀の5女とされますが、第何子かは不明と書いている書籍もあります)。その母が誰かも実は分かっていませんが、信長と同母とすると、土田御前の娘ということになります。信長の生年は天文3年(1534)ですので、お市が天文16年生まれとするならば13歳違いの兄と妹ということになるでしょう。
しかし『以貴小伝』(徳川歴代将軍の生母・側室について記した伝記)には、お市は信長の「いとこ」であったが、妹と「披露」して、北近江の戦国大名・浅井長政に嫁がせたとの異説を載せています(『渓心院文』にもお市は信長のいとことの説を載せています)。お市は信長の妹だったのか、いとこだったのか、どちらが正しいか判断する材料がないので、ここでは通説に従ってお市は信長妹としておきます。