「新しいこと」を嫌がるのは老化の証

ところが困ったことに、この前頭葉は老化とともに萎縮していくのです。

若い頃は積極的にあちこちを旅していた人でも、年を取るとそれを嫌がるようになることがあります。体力的に難しくなる面もあるでしょうが、それだけではありません。住み慣れた街や自宅にいることに安心感を得るようになり、「知らない土地を見てみたい」「新しい体験をしたい」という意欲が持てなくなるのです。

これが、前頭葉の萎縮による心の変化の典型にほかなりません。

こうした意欲の低下は、身体機能のさらなる衰えを誘発してしまいます。たとえば「趣味でゲートボールをしていたけれど、仲の良い友人が欠席しがちになり、自分も行く意欲を失ってしまった」という人がいます。すると、週に数回行っていた「歩く」「腕を振る」「しゃがむ」といった動作が失われ、2~3カ月後には駅の階段を上るだけでも息が切れるようになってしまい、膝に痛みも出始めます。筋肉が減ると疲れやすくなるので、さらに運動をしたくなくなることでしょう。

足腰より先に「心の衰え」が始まる

また、食に対する意欲が低下するのも、身体的に悪い影響を及ぼします。「自分ひとりのために食事をつくるのは面倒」と、パンや麺類だけで済ませるようになるとタンパク質不足に陥り、筋肉が作られなくなります。結果として、握力が落ちてペットボトルの蓋が開けられなくなったり、歩行スピードが目に見えて遅くなったりします。

このように身体機能の衰えは、実は足腰よりも先に「心の衰え」や「社会とのつながりの喪失」から始まるのです。

ちなみに未知の新しい物事を避ける傾向は、女性より男性のほうが強いようです。同じ年代の夫婦でも、海外旅行に積極的なのはたいてい妻のほう。旅行好きの私の友人も、以前こんなことを言っていました。

曰く、ローマやパリ、ニューヨークあたりのホテルで出会う日本人男性の多くは、奥さんに熱心に誘われて「これも女房孝行だ」と一応はつきあう。でも実際に旅行をしてみると面倒なことも多く、「こんなにひどい目に遭うとは思わなかった」などとボヤく人が多い。