総額約8億円相当の保有株を従業員に贈与

「中卒で学歴もなく、私ほど能力がない一部上場企業の代表取締役はいない。今があるのは社員、フレンド社員(パート・アルバイト)が、毎日、昼夜問わず働いてくれるおかげだ。感謝の思いをカタチにしたい」と、“分かち合う資本主義”(会社の成長により得た利益をお客様や地域社会の皆様をはじめ、共に働く従業員へ還元するという考え方)を実践している。

2018年(平成30年)には自身の保有株約15万株(当時の株価で3億5000万円相当)、2023年には約4億5000万円に相当する約20万株(発行済み株式の0.5%程度)を贈与した。

内容は2018年も2023年もだいたい一緒だが、2023年では社長以下役員、社員、勤続年数など一定条件を満たしたフレンド社員(パート・アルバイト)まで含めて、100~300株(当時の株価で約25万~75万円相当)を7月に贈与した。ハイデイ日高の最低取引単位は100株で対象人数は約1100人だった。

ハイデイ日高では、2023年2月に、役職などに応じて5万~45万円の特別感謝金を社員に支給した。4月からは社員の基本給を月1万3000~1万5000円引き上げた他、初任給も月1万5000円引き上げて大卒で25万円にした。

「2023年(令和5年)2月に創業50周年を迎え、社員に感謝の気持ちを表すために一連の“分かち合う資本主義”を実施しました」(神田)

ちなみに、神田は2023年2月末時点で約555万6000株(発行済み株式の14.566%)を持つ筆頭株主である。総額約8億円相当の自身が保有する株を従業員に贈与するということは、前例の少ない快挙である。

「株式を店頭登録した1999年(平成11年)の時価総額が約60億円、それが2026年2月20日時点では約1220億円になっています」(神田)

神田は、2024年から決算賞与の名称を「成長分配金」に変えて支給。2009年2月より18期連続でコロナ禍においても途切れることなく、社員への利益還元を大切にしている。

賞与明細と現金
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コロナ禍で毎日1000万円の赤字からV字回復へ

神田はコロナ禍からのV字回復を「私の使命」として「日高屋」を立て直してきた。コロナ禍の惨状を語る。

「営業時間短縮や酒類提供の制限があった時期は一番苦しかったですね。毎日1000万円ずつ赤字が出て、1カ月で約3億円の大赤字でした。2023年(令和5年)で創業50周年を迎えましたが、こんなに大きな赤字が出たのは初めての経験で、眠れない夜が続きました。

『日高屋』の強みは、駅前一等地で大衆中華料理と居酒屋の要素を取り入れた『ちょい飲み』にあります。売上高に占めるアルコール比率は15~17%、同業他社の3~5倍もあります。コロナ禍では酒類が売れることが、逆に弱みになってしまいました。

また、コロナ禍ではリモートワークで自宅で仕事をする人が激増し、駅前一等地の人流が減り、客数、売上高が落ち込みました。このため家賃などの固定費負担が重くのしかかり、大幅な減収減益に追い込まれたのです。会社が大丈夫だったのは、国と地方自治体からの協力金の支給に加え、内部留保が厚かったからです」(神田)

ちなみに、ハイデイ日高の2021年(令和3年)2月期の売上高は295億円、営業利益は約27億円の赤字だった。2022年(令和4年)2月期の売上高は264億円、営業利益は約35億円の赤字で、2期連続の赤字額は約62億円だった。ただし政府からの協力金が支給されたことと、内部留保が厚かったことでことなきを得た。

「コロナ禍がきっかけで、これまで積極的に取り組んでこなかったロードサイドへの出店を進めています。出店場所はしっかりと見に行き、周辺の競合他社店舗、商業施設や近隣の住宅の状況、交通量などをチェックしました。駅前一等地の物件を見るのとは勝手はかなり違いますが、ロードサイドへの出店が、当社の転機になったのは確かです」(神田)

2022年(令和4年)5月、神田は社長交代に踏み切った。義弟の高橋均(社長在任13年)に代えて、青野敬成(52)を社長に就けた。コロナのV字回復を進めるのに、当時81歳の神田が青野と共に陣頭指揮を執った。