肩関節、股関節は力の伝達ロスが生じやすい

また、深層筋群が適切に機能すれば、身体全体で生み出した力をムダなく道具(たとえばバットやラケット)や地面に伝えることができるため、ロスがありません。

実は、身体には骨格構造上、力の伝達ロスが特に生じやすい部位があります。次の部位です。

・足部(距骨下関節・距腿関節、足底アーチ)
・股関節
・背骨
・肩甲骨、肩関節

これらの部位の共通点は何だと思いますか?

伝達ロスが生じる部位は、関節が球状だったり、縦長状だったりすることで、関節面が不安定になりやすいという特徴があります。

たとえば、肩関節は先端が球状になった腕の骨(上腕骨頭)が肩のくぼみ(関節窩)にはめ込まれているだけです。可動域が広い反面、安定性が悪いと言えます。

痛む肩を抱える女性
写真=iStock.com/PeopleImages
※写真はイメージです

筋肉を酷使せずとも大きなパワーは発揮できる

どのスポーツでも、パフォーマンスを向上させようとするときに筋力を強化するだけでは必ず頭打ちがきます。ケガが増えてくることも想像がつくと思います。

しかし、それでもパワーは上げたい。

多くの選手はそんなジレンマに悩んでいます。

私がお伝えする「身体操作」は、そういったジレンマをも解消する手段になります。

筋力が同じでも、身体操作が違えば出力も動きの洗練度も変わります。洗練度とは、疲れにくさや予備動作の最小化などをイメージしていただくとわかりやすいでしょう。

競技レベルが上がれば上がるほど、「どう動くか」の追求が不可欠になります。

「筋力への依存度を下げながら、大きなパワーを発揮できる動作パターンを身につける」

これを理想論だと揶揄やゆする人もいるかもしれませんが、実際にトップアスリートたちは実現しています。

身体操作トレーニングを導入した選手たちの多くが、どんどん「理想」へと近づいていることも事実です。

身体操作トレーニングでは、次のような道筋をつくります。

目標:筋力への依存度を下げつつ、最大限のパフォーマンスを引き出すための動作パターンを獲得する

そのために、

・4つの「動きの協力者」を有効的に活用できるようになる
・「身体のつながり」を高めて、「動きの協力者」の力をムダにしない

結果:「エネルギーリターン」率がアップし、パフォーマンスの向上を実現する

では、具体的な「身体操作トレーニング」の中から、今回は「フェーズ0」のトレーニングである上部肋骨の動きを向上させる「上部肋骨回し」をご紹介しましょう。

「フェーズ0」の段階では動きの大きなトレーニング動作は行いません。その分、じっくりと自分の内部の感覚に意識を向けていく内容になっています。

足部であれば、ただ地面に立つのではなく、足趾や足裏にかかる細やかな圧の変化を感じ取る。股関節であれば脚を動かす・支える際に股関節の球構造を感知できているかを確かめる。骨盤や背骨、肩甲骨も同様に、内部の感覚に重きを置きながら整えていきます。