使うとわかる、老舗ブランドの理由

筆者は毎日のように亀の子束子を使っている。鉄のフライパンや中華鍋の油汚れや焦げをたわしでごしごしと力を込めて落としても、毛が潰れず、4~5カ月は持つ。手になじんで握りやすいため、洗い物がしやすい。

実は、過去に2、3度、別のメーカーのたわしを買ったことがあった。たわしならどれも機能は同じと、高をくくっていた。中華鍋やまな板洗いに使ってみてわかったのは、毛のへたり具合が違うことだ。たわしの先端の毛先がすぐにへたり、全体的に毛並みが片方に寄ってすき間ができて、焦げや汚れが落ちなくなった。結局、そのたびに数カ月で、亀の子に戻った。

亀の子束子のうたい文句にある「使い込むほど、他店の3倍は持つ」は、大げさではなかった。しっかりと立った毛、丈夫さ、握りやすさ。そういう変わらない品質への安心感が、119年続くブランドたる理由なのだと、工場を見学して改めて思った。

商品の検品を行う滝野川工場(左)
撮影=プレジデントオンライン編集部
商品の検品を行う滝野川工場(左)

「職人がいない」一大危機に直面

「昔はすべての商品を国内の職人が作っていたのですが、国内でシュロが入手できなくなったこともあり、ヤシの産地であるスリランカの工場で、現地の職人さんにも任せるようになりました。さらに、一時期、職人の高齢化による退職で国内工場から職人がいなくなるという状況に直面したこともあったのです」

119年続く家業を襲った危機は、かつてシュロの一大生産地として、たわし作りの伝統が息づく和歌山の職人の手を借り、乗り越えたという。

今では、30、40代の若手も育ち、亀の子独自の製法は彼らに受け継がれている。

たわし作りの伝統を守り続けている同社は、次の100年を見据えた事業に取り組み始めていた。たわし1本立てから商品の多角化へ向けた挑戦だ。

創業以来の伝統がメリットにもなり、リスクにもなる
撮影=プレジデントオンライン編集部
創業以来の伝統がメリットにもなり、リスクにもなる