厚生労働省によれば、男性の「平均寿命」は81歳だが「健康寿命」は72歳。女性の平均寿命は87歳で健康寿命は75.45歳。人間科学の研究者・坂口幸弘さんは「この健康寿命をなるべく延ばすためには、テクテクと歩く、カミカミとよく食べる、ニコニコと笑うだけでなく、もう1つの習慣も大切だ」という――。

※本稿は、坂口幸弘『人は生きてきたように死んでいく』(光文社新書)の一部を再編集したものです。

日本で根強い「ぽっくり死」信仰

「ぽっくり」という言葉をご存じだろうか。『日本国語大辞典』によれば、「ぽっくり」とは本来、物が折れるさまを表す語であり、それが転じて、元気だった人が突然亡くなる様子を意味する言葉として用いられている。

日本では古くから「ぽっくり信仰」という言葉がある。『日本民俗宗教辞典』によれば、ぽっくり信仰とは「臨終まで排便を他人の世話にならず健やかに過ごし、病まず寝つかず極楽往生したいという信仰」である。これは、早く死にたいという願望ではなく、健康で長生きしたうえで、長患いせずに安らかに死を迎えたいという人々の願いが込められている。

ぽっくり死を御利益とする寺院は、各地に点在している。奈良県生駒郡斑鳩町にある吉田寺は、平安時代末期に浄土教の僧侶・源信によって開基された寺院で、代表的な「ぽっくり寺」として知られている。源信が、母親の臨終の際に念仏を唱え、安らかに往生させたという伝承があり、長患いで苦しまずに死を迎えたいと願う人々の信仰を集めている。

突然の「ぽっくり死」を望む人が71%

では、現代の人々はどのような死を理想としているのだろうか。公益財団法人日本ホスピス・緩和ケア研究振興財団の調査では、2008年以降、自分で死に方を選べるとしたら、いわゆる「ぽっくり死」と「ゆっくり死」のどちらが理想だと思うかを継続して尋ねている。最新の2023年調査では、「ある日、心臓病などで突然死ぬ(ぽっくり死)」を選んだ人が70.6%、「病気などで徐々に弱って死ぬ(ゆっくり死)」が29.4%となり、「ぽっくり死」を望む人が圧倒的に多かった。

過去の調査結果を見ても、「ぽっくり死」を理想とする割合は、2008年73.9%、2012年70.9%、2018年77.7%、2023年70.6%と、この15年間で大きな変動はなく、7割超で推移している。

年齢層別では、年齢が上がるにつれて、「ぽっくり死」を希望する割合が増加する傾向がみられた。2023年調査では20代が約6割だったのに対し、50代以上では約75%と15ポイントほど高かった。この傾向は過去の調査でも一貫して示されており、シニア世代ほどぽっくり死ぬことを望む傾向が強いといえる。