寝たきりで迷惑をかけたくない

同財団の2023年調査によれば、「ぽっくり死」を理想と考える理由として3番目に多かったのは、「寝たきりなら生きていても仕方ないから」で、回答者の47.7%が選択した。この理由を選んだ人は「ゆっくり死」を望む人では、わずか5.8%にとどまっていた。この結果には、病気によって寝たきりになることへの強い不安が背景にあると考えられる。

内閣府の『令和3年度 高齢者の日常生活・地域社会への参加に関する調査』によれば、将来の日常生活全般に関して高齢者が不安に思うこととして、「自分や配偶者の健康や病気のこと」を挙げた人が約7割と最も多く、「自分や配偶者が寝たきりや身体が不自由になり、介護が必要な状態になること」が約6割で続いている。

年齢を重ねるにつれて、身体の衰えを感じたり、何らかの不調を抱えたりすることが増えてくる。また、友人や知人から病気や介護の体験談を聞く機会も多くなる。高齢者にとって、健康や病気、介護は身近で現実的な問題であり、自分自身や配偶者の健康が損なわれることや、身体的な自立が困難になることに不安を抱く人は多い。老いや病に直面すれば、若い頃のような身体的自立を維持するのは難しくなる可能性が高い。そうした事態は避けられないとしても、その時期を少しでも遅らせることはできるかもしれない。

【図表2】理想の死に方別にみた理由
出典=日本ホスピス・緩和ケア研究振興財団「ホスピス・緩和ケアに関する意識調査 2023年」

「健康寿命」は平均寿命より短い

そこで注目されるのが、「健康寿命」という考え方である。健康寿命は、生活の質を重視する観点から、2000年に世界保健機関(WHO)が提唱した概念であり、「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」を指す。

厚生労働省によれば、2022年の日本人の「健康寿命」は男性72歳、女性75.45歳と報告されている。同年の平均寿命は男性81.05年、女性87.09年であり、その差は男性で約8.5年、女性で約11.6年となる。平均寿命から健康寿命を差し引いたこの期間は「日常生活に制限がある期間」、すなわち身体的に自由がきかない期間といえる。

2004年時点では、男性約9.2年、女性約12.9年であったことから、この約20年間で男性は半年以上、女性は1年以上短縮されている。それでも平均すると、男性で8年以上、女性で11年以上も制限のある期間があることから、高齢になるにつれて健康への不安が募るのも理解できる。