生涯、結婚しない人が増えている。東京大学名誉教授の上野千鶴子さんは「男性と女性では、非婚の理由が少し違う。女性は、結婚は不利だと感じている一方、男性は経済力がなければ結婚できないと思い込んでいる」という。歌手のアグネス・チャンさんとの対談をお届けする――。

※本稿は、上野千鶴子、アグネス・チャン『報われない社会で、それでも生きる』(Gakken)の一部を再編集したものです。

原宿の歩道橋をわたっている女性
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頑張っているのに、報われない怒り

【アグネス】私、前から上野さんに聞いてみたいと思っていたことがあるんです。フェミニズム研究の第一人者として長きにわたってたゆまぬ活動をしておられますが、その原動力って何なのかな? って。

【上野】あ、それは単純明快で「怒り」です。

【アグネス】社会に対する怒りという意味ですか?

【上野】そうです。女性は十分に頑張ってきたし、今だって十分に頑張っています。それなのに女性差別という壁は崩壊しないという社会の不公正に対する怒りです。

それからもう一つ、自分の中に渦巻くあくなき好奇心も原動力になっているのを感じます。

【アグネス】好奇心が原動力なのは私も同じです。人や物事に関心を持って世の中を見ていると、これはどういうことなのかな? という疑問が生まれて、知りたい知りたいってじっとしていられないんですよ。

香港でスカウトされて歌手になった時も、来日した時も、これから何が起こるのか知りたかった。スタンフォード大学で学んだ時もそうだったし、ユニセフをはじめとするボランティア活動も世界の現状を知りたい、自分にできることを把握したいという気持ちに突き動かされてやっています。だから好奇心が私の新たな扉を開いてくれると思っているんです。

【上野】アグネスさんには怒りはないの?

【アグネス】「怒り」かどうかはわかりませんが、どうして世界は平和にならないのだろうとか、なんで子ども達にミルクも薬も与えることのできない国が存在してしまうんだろうとか。不平等に対する不満があると思います。それを少しでもよくしたいためにボランティア活動をしているのだと思います。