きっかけは「掃除のひと工夫」
この製法は、明治時代に西尾商店の創業者・西尾正左衛門が独自に編み出したという。
祖業は靴拭きマットの製造販売だった。初代・正左衛門はある時、大量に返品された欠陥品の一部を丸めて障子の清掃に使っていた妻を見て、たわしの開発を思いつく。
当時、掃除道具の主流は藁や縄を束ねたものだったが、初代は柔らかいシュロ(棕櫚、ヤシ科シュロの幹から取った繊維)を女性の手になじむように俵型に成型し、「亀の子束子」を作り上げた。商品は大ヒット。翌1908年、「亀の子束子」の名前と亀のマークを商標登録した。
その後、国内のシュロが枯渇したことから、スリランカなど東南アジアからパーム(ココナッツの実から採取した繊維)を調達し、メイン素材に切り替えた。
発売から119年の間に、商品はパーム、シュロに、ロープや床材に使われる植物の葉の繊維から採取したサイザル麻が加わり、素材別としては3種類に増えた。そこから形状や用途別にさまざまな商品を開発し、今では約80品目を展開している。
洗剤に頼らなくても汚れが落ちる
「定番のパームたわしは、落ちにくい鍋やフライパンの油汚れをお湯だけで落とすことができます。根菜類の泥洗いやざるの細かい目の汚れ落としにも使えます。少し柔らかめのシュロたわしは、洗剤を付けたスポンジで洗っても落ちにくい湯呑の茶渋に効果があります。一番柔らかいサイザルは、ガラスやプラスチック製品、シンクを傷つけずに洗えるので、おすすめです。また、水につけると、柔らかくしなやかになるという特性があるため、顔や体の垢落としにも使えるんですよ」
最近人気の竹製のせいろやざる、中華鍋、鉄瓶などは、たわしでお湯洗いが基本だ。スポンジで落とせない汚れを洗剤なしで、たわしが落とす。それがスポンジとは違うたわしの魅力になる。
また、ものをむだにしない明治時代に生まれた商品だけに、耐久性があって長持ちする。たわしの毛先がしなってきたら、風呂場用に、さらに玄関やベランダ用の掃除道具に使い回しして、毛が摩耗するまで使える。環境に優しい商品が求められる今の時代に、たわしが再び注目されるのもそこにある。
こうした良さは、たわしの元祖「亀の子束子」特有のものなのか。多種多様のたわしがあるなかで、何か違いはあるのだろうか。


