※本稿は、和田一郎『大人になっても消えない重荷を抱える人のための 生きづらさの手放し方』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
脳は生き延びるために変化する
個人の脳は生き延びるために「闘争」や「迎合」といったサバイバル戦略を身につけます。
それでは、もし「ある国や地域の大多数」が、戦争、飢餓、あるいは政治的混乱といった「慢性的なトラウマ環境」を共有していたらどうなるでしょうか?
個人の生存戦略は、集団の中で共有され、やがて「文化」という名の「暗黙のルール」へと昇華されます。私たちはしばしば、異なる文化圏から来た人々の行動を見て「マナーが悪い」と眉をひそめます。
しかし、データサイエンスの視点から見ると、その行動の背景には、その民族が背負ってきた「過酷な歴史への適応」と「資源リソースによる行動変容」を見出せるのです。
なぜ一部の外国人は列に並ばないのか
典型的な例として、日本人がよく直面するカルチャーショックを取り上げましょう。駅のホームや、災害時の炊き出しで、私たち日本人は、誰に指示されなくとも整然と列を作ります。
しかし、一部の国や地域から来た人々は、列を無視して我先にと割り込んだり、力ずくでドアをこじ開けようとしたりすることがあります。
彼らには道徳心がないのでしょうか?
そうではなく、これは彼らの社会において、長きにわたり「待つこと」が「死(あるいはリソースの喪失)」を意味してきたことに由来する行動です。
進化生物学には「生命史戦略」という概念があります。明日をも知れぬ不安定な環境(高い死亡率、資源不足)では、将来のために我慢して貯蓄するよりも、「目の前の資源を今すぐ獲得し、消費する」という「早い戦略」をとる個体が生き残ります。
食べ物があるキャンプへ行くバスが1日に1本しか来ず、全員が乗れる保証がない国。配給がいつ止まるかわからない難民キャンプ。
そこでは「お先にどうぞ」という譲り合いは、美徳ではなく「淘汰されるべき弱さ(自殺行為)」に他なりません。絶対的な死が待っています。
そのようなことから、彼らの「割り込み」は、無秩序なのではなく、「資源獲得競争に勝つための、極めて合理的な最適解」なのです。
もちろん、こうした行動がよいと言っているわけではありません。彼らが置かれた状況が、彼らにそのような行動をとらせているということです。

