子は親を選べない。「親ガチャに外れた」と嘆く人はどうすればいいのか。獨協大学教授の和田一郎さんは「親の貧しさがそのまま次の世代にも引き継がれるアメリカやイギリスと比べて、日本は親の影響をそれほど強く受けない。個人の努力や才能で十分に逆転が可能だというデータがある」という――。

※本稿は、和田一郎『大人になっても消えない重荷を抱える人のための 生きづらさの手放し方』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

フィニッシュラインを切るビジネスマン
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幼少期の辛い体験が学歴に与える影響

親のアルコール・薬物問題、極端な貧困、養育放棄といった小児期逆境体験(Adverse Childhood Experiences:ACEs)は、大人になってからの「社会的な立ち位置(社会経済的地位)」にまで深い影を落とします。

世界中の研究が示しているのは、「過去の傷が重いほど、社会的な成功の道のりを歩むのが難しくなる」という現実です。ここでは、その「不利の連鎖」がどのように起きるのか、3つのドミノ(学歴・雇用・所得)に分けて解説します。

学歴のドミノ

現代社会において、人生の選択肢を広げる最初の鍵は「学歴」です。

しかし、ACEsサバイバー(親の貧困や養育放棄などに直面する子どもたち)にとって、学校生活を全うすることは想像以上に困難なミッションとなります。多くの研究が、ACEsスコアが高い子どもほど高校を中退したり、大学進学をあきらめたりする確率が高いことを示しています。

これは決して「勉強ができないから」でも「やる気がないから」でもありません。

繰り返しますが、原因は「リソース不足」にあります。

家庭内で常に暴力や暴言にさらされている子どもは、生き延びるために「警戒モード」に全エネルギーを注ぎます。安心して眠ることもできない状態で、教室で先生の話に集中し、大切なことを覚えることができるでしょうか?

彼らは生存本能として、「学習」よりも「防御」を優先しているのです。その結果、学業成績が低迷し、進学の道が狭くなってしまうのです。これは本人の怠慢ではありません。