給与の額よりも大事なのは「納得感」
【木村】「でも先生、それならいっそ給与をもっと引き上げれば不満は収まるのではないですか? “分配”が公平なら、誰も文句は言わないように思えますが」
【教授】「そこが誤解だ。給与を上げても、不満は必ずしも消えない。なぜなら、額よりも『納得感』が問題だからだ。もし昇給の理由が不透明なら、『誰が決めたんだ』『なぜあの人が優遇されるんだ』と、逆に疑念が強まることすらある」
【木村】「つまり、お金で不満を封じ込めるのは限界がある……。うちの会社もボーナスを増やしたのに、なぜか辞める人が増えたのは、まさにそのパターンかもしれません」
【教授】「そうだろう。金額は一時的な満足しか生まない。大事なのは“どう決まったか”というプロセスを納得できる形で示すことだ」
歴史に見る「不透明さ」のリスク
【教授】「この問題は現代の企業に限らない。江戸時代の年貢でも、取り立ての基準が不透明だと百姓一揆が頻発した。『何割取られるか』よりも『どうやって決まっているか』のほうが人々の怒りを呼んだんだ。歴史を見ても、公正さを欠いた制度は長続きしない」
【木村】「なるほど……。つまり人は“損をしているかどうか”以上に、“不透明さそのもの”に耐えられないんですね」
【教授】「その通りだ。現代でも同じで、納得できない税制や説明不足の制度は批判を浴びやすい。企業の評価制度も同じ構造を持っている。透明性を欠けば、不満は膨張し、やがて制度全体への不信につながる」
【木村】「確かに……。僕の部下も給与額そのものより『どう決まっているのかわからない』ことを口にしていました。あれは歴史と同じパターンだったんですね」
【教授】「そうだ。だからこそ、マネージャーは“制度の設計者”であると同時に“説明者”でもある。歴史が示すのは、透明性がなければ組織も制度も維持できないという普遍的な教訓なんだ」
