夜中に起きたらリラックスしてから再入眠

不眠症に非常に効果的な行動療法にはもう一つ、刺激制御療法がある。この治療法では眠くなった時にだけベッドに入る。夜中に目が覚めたら20分後にはベッドから出て何かリラックスできることをし、再び眠くなったらベッドに入る。

この方法だと夜中に目覚めた時に一旦起き出すことで就床時間が短くなるため、実質的には睡眠制限療法の一種とも言える。

不眠症に苦しむ女性
写真=iStock.com/PonyWang
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以前は、刺激制御療法を行うと「ベッド」と「覚醒したまま横になっている状態」の関連性が薄まると考えられていた。この理論では不眠症は条件づけと関連し、不眠症の人は目覚めたままベッドに横たわっていることが多く、その状態を学習しているのだとしている。

そのため、ベッドから出ることで、ベッドと自分の間の学習された関係を断ち切る可能性があるというのだ。しかし、2023年のメタ分析で、これはこの療法の作用メカニズムではないというエビデンスがあるとわかった。

この療法の効果には、ベッドから出て気晴らしをすることによる認知活動の抑制がおそらく関連しており、それがベッドで緊張しながら思い悩む悪循環を断ち切るのだと研究者たちは結論づけた。これは現代の狩猟採集民の夜中の過ごし方とも合致している。ただし、彼らは中途覚醒を不安に思わないので夜中に起き出す必要がないのだが。

患者に先に適用するのはどっちか

睡眠制限療法、刺激制御療法のどちらも効果は強力である。しかし、どちらを選んだらいいのだろう? 私の場合、患者には先に睡眠制限療法を適用することが多い。刺激制御療法だと夜中に不安にさせてしまうことが多いと気づいたからだ。

患者たちは夜中に目が覚めると、20分経っただろうか、ベッドから出る時間になっただろうか、と過剰に心配になり、夜中にベッドから出るのはしばしば懲罰のように感じたと言った。睡眠制限療法の主な利点は、就寝時刻と起床時刻を意識すればよく、その間に起こることを心配する必要がないことだ。

多くの患者を心穏やかにさせるし、それでも夜中に緊張が高まりすぎた場合はベッドから起き上がり、また眠くなったらベッドに入ればよい。患者が静かにベッドに横になっていたいなら、現代の狩猟採集民同様、そのままベッドにいればいい。