遺骨を食べる慣習「骨噛み」
遺骨を食べる行為は「骨噛み」と呼ばれ、日本の一部地域では近年まで慣習として行われていたことが確認されている。骨噛みとは、火葬後に近親者が集まり、遺骨を粉にして服用する、あるいはそれに類する行為とされ、食屍習俗の一種とされている。
民俗学者の近藤雅樹氏は、近親者による食屍は一見アブノーマルに思われるが、長寿を全うした者や崇敬を集めていた人物が対象となっていることから、死者の卓越した生命力や能力にあやかろうとする素朴な願いが反映されていると述べている。また、最愛の人の遺骨を噛むという行為には、深い哀惜の感情が込められており、こうした行為は人間の素朴な感情の表出と捉えることができると論じている。
食屍習俗としてタブー視されるが…
遺骨を口にすることについて、日本の法律では直接的な規制はないが、現代社会ではタブー視される可能性が高く、周囲から非難を受けることもある。また、火葬の際にダイオキシン類や六価クロムなどの有害物質が付着している可能性があるため、健康への影響を懸念する声もある。
それでもなお、愛する人の遺骨をみずからの身体に取り込み、一体となることを望む遺族もいるだろう。遺骨を食べることに対する賛否は分かれるとしても、そうした遺族の故人への強い思慕の情は尊重されるべきである。気持ちの整理につながるのであれば、遺族の望むようにしてもいいのではないかとも思えなくもない。
「故人は望んでいた?」という疑問
しかし、「自分の遺骨だったら」という視点で考えてみると、意見は変わってくるかもしれない。自分が死んだ後のことなので、家族が好きにすればよいと考える人もいるだろうが、自分の遺骨が食べられるなどすることに抵抗を覚える人も多いはずである。
私どもが実施した先の調査では、回答者の約8割が「自分の遺骨を家族・親族が食べることに抵抗がある」と答えていた。また、自分の遺骨がペンダントなどに加工され、身につけられることにも約4割が抵抗を感じていた。さらに、「自分の遺骨を家族や親族に見られたくない」と答えた人も1割強存在していた。
とはいえ、死んでしまった後は、遺された人の判断に委ねるほかない。食べられたり、加工されたりすることに強い抵抗があるならば、生前に自分の希望を伝えておくしかないが、その希望が守られるかどうかは、遺族次第である。

