行列ができる飲食店の間違いとは?

【アワタニ】そんなにパキッと「価格は需要で決まる」って言われると、日本の生産者とか小売店とかの企業努力が無視されたようで、あんまりいい気持ちはしないなぁ。

【松田さん】ほら、さっきは「労働価値説はポンコツ」って言っておきながら、もう「企業努力」と言い始めてるでしょう。企業努力って「コストを大きく上回る儲けすぎはけしからん」という考え方ですよ。よく、行列ができる飲食店が素晴らしいなどと言われますよね。この物価高の時代に価格据え置き、利益度外視でお客さんの笑顔が見たいから頑張ってるんです、って。でも、マーケットの視点では、需給ギャップが発生しているので、ミスプライスしていることになるんです。

【アワタニ】値段のつけ方を間違えている、と。価格がある程度決まっていたら誰かが割りを食って利益を取れなかった可能性があるし、それは市場からすると不自然という考え方ですね。日本の100円ショップや1000円カットのクオリティーの高さに外国人が驚く理由が、わかった気がします。

お値段据え置きは美徳ではない

【松田さん】もちろん自分がオーナーであり従業員でもある場合、目的は長く続けることだから価格は据え置きでいい、って考え方もアリです。でも、もしオーナーが別にいたら「早く値上げして利益を出して、配当しろ」となるのが市場原理でして。こんな行列ができていて1500円でも売れるなら値上げしろ、価格の最適化ができていないぞ、となります。

【アワタニ】お値段据え置きは美徳ではないのかなぁ。

【松田さん】モノの値段はコストで決まるから暴利をむさぼるのは道徳的でない、という感覚が深く根づいている人にとっては美徳となるのでしょう。

【アワタニ】僕、完全にそっち派でした。

【松田さん】あ、もしかしたらこれも関係しているかな。私が大学の経済学部にいたころは、マルクス経済学と近代経済学(*7)って半々くらいの履修だったんですよ。教授の人数は「マル経」のほうが多かったんじゃないかな。

【アワタニ】えっ、そうなんですか。東大の経済学部では社会主義的な考え方の授業が経済学の半分もあったってこと?

*7 近代経済学
需要と供給、市場メカニズムを重視する現代の主流経済学。マルクス経済学と対比される。数学的モデルを多用し、資本主義経済の分析に重点を置く。