空調服も使えず、暑さに耐えるしかない

まさに“熱のサンドイッチ”状態になる真夏のミニユンボ。猛暑を記録した昨年の夏には、座席の温度が55℃まで上がったそう。対策としてファン付きの空調服を着るそうだが、東さん曰く「気休め程度」だという。

また、その空調服が最悪の事態を引き起こすこともある。

「根伐り(所定の深さまで地面を掘る作業)をするときに、都内の場合だと水が湧いてくる土地に当たることが多いんです。そのときには、土砂が液状化しないように改良剤(土の強度や安定性を高める材料)を使用して土を固めるんですが、その改良剤は粉塵になっているので、空調服を使うと粉が舞うんですよ。しかも、改良剤には健康に良くない物質も含まれているため、絶対に吸えない。なので、そもそも空調服すら使えないんです」

根伐り後の地面。水を多量に含んでドロドロになっていることがわかる
写真提供=東香織さん
根伐り後の地面。水を多量に含んでドロドロになっていることがわかる

矛盾が多すぎる“謎の現場ルール”

次に挙げられるのが、建設現場に蔓延る“謎ルール”だ。

すべての建設現場では、国が定めた法規やルールに則って作業を進めなければならない。しかし、その法規やルールのなかには、思わず「こんなもの絶対にいらない!」と思ってしまうような“謎ルール”がいくつか存在している。

「例えば、現場によっては落下防止用にフックが二つ付いている『二丁掛け安全帯』の着用が義務化されているんですが、なぜか命綱を付けない重機オペレーターも着用しないといけないんです。これが根伐りのときに梯子を使って地下に降りる人ならわかるんですが、重機オペレーターにはそうした作業工程がありません。なので、二丁掛け安全帯は本当に無駄なんです」

ユンボに乗ると自然に笑みがこぼれる東さん
筆者撮影
ユンボに乗ると自然に笑みがこぼれる東さん

二丁掛け安全帯の着用そのものが、直接事故につながるわけではない。しかし、不要な二丁掛け安全帯を着用することで、本来は着用できたはずの他に必要な装備を着用できず、事故や怪我に繋がる可能性はある。

また、真夏の熱中症対策として、現場によっては体温を測るリストバンドの着用も義務付けられているという。そのリストバンドは一定の体温を超えるとアラームが鳴る仕組みのもので、アラームが鳴ると作業を止めなければならない。

しかし、前述の通り、真夏になればアラームが鳴る温度を軽く超えてくる。すると、現場の作業をその都度止めなければならないのだが、頻繁に作業を止めてしまえば、当然スケジュールに遅れが出て工期に間に合わなくなる。

建設現場のルールは作業員たちの安全を守るためのものだが、必要以上にルールが増えてしまうと現場の業務を圧迫してしまう。必要なルールは残しつつも、現場を疲弊させるだけのルールには調整が必要ではないだろうか。