女性作業員を悩ませる「トイレ問題」

また、女性ならではの問題もある。

建設現場はいわゆる“3K(きつい・汚い・危険)職場”だと言われているが、そのなかでも女性の場合は、トイレで不自由を感じることがかなり多いという。

「小~中規模の建設現場だと、現場専用のトイレの設置に時間がかかったり、設置予定がない場合が多いです。現場にトイレがないときは、近くのコンビニなどに借りに行くことになるのですが、コンビニまでの距離が遠いとトイレ休憩で作業が中断してしまいます。

それでは効率が悪くなってしまうので、現場に出るときには簡易トイレは必須なんです。私は箱状の容器にビニール袋を敷いたものを使っています。女性は男性よりもトイレに行くことが多いので、作業中にトイレに行きたくなることもしょっちゅうです。でも、その作業が終わるまでは我慢するしかないので、我慢のし過ぎで膀胱炎になることも珍しくありません」

仮設トイレを使うために必要な、仕切り用の簡易テントを組み立てる東さん
写真提供=東香織さん
仮設トイレを使うために必要な、仕切り用の簡易テントを組み立てる東さん
テント設営後の仮設トイレ内の様子。こんなに狭い環境でトイレをしなければならないという状況がある
写真提供=東香織さん
テント設営後の仮設トイレ内の様子。こんなに狭い環境でトイレをしなければならないという状況がある
現場に行く際に持ち歩いている携帯トイレ。小さい箱のような形状で、中にはビニール袋が敷かれている
写真提供=東香織さん
現場に行く際に持ち歩いている携帯トイレ。小さい箱のような形状で、中にはビニール袋が敷かれている

女性特有の問題はトイレだけではない。

「最近は、元請けの建設会社が現場を管理するためのクラウドシステムを導入しているんですが、そのシステムには作業員本人の個人情報や、緊急連絡先の登録が必須になっています。それはつまり、システムを管理している元請けの人たちは簡単にその情報を覗けるということなんです。トイレの問題もそうですが、そもそも建設現場では女性がひとりもいないことを前提に制度や設備が作られてしまっているんです」

昨今、個人情報の管理は、業種を問わずあらゆる企業・行政で厳しく求められている。しかし、建設業界ではそういった社会の常識が通用しないこともあるという。

見ず知らずの人から連絡が来ることも

「以前に私がテレビ番組に出たときに、SNSのDMに『東さんって、○○の現場に入ってました?』って、突然連絡が来たんです。そこはまさに私が入っていた現場だったんですが、テレビでは公開していないので、私が知らない人が知っているはずはないんですね。なので『なんで知ってるんですか?』って聞いたら、『その現場の元請け会社の人間なんですけど、システムで見ました。東さんって、○○にお住まいなんですね』って」

建設業界の情報管理がいかに不十分であるか、取材中も耳を疑うばかりだった
筆者撮影
建設業界の情報管理がいかに不十分であるか、取材中も耳を疑うばかりだった

こうした事例は頻発しているわけではないようだが、現行の制度ではこうした問題が発生してしまうおそれがある。作業員の個人情報にアクセスする際の権限管理や、業務以外の目的に使用した場合の罰則規定など、働く女性を守る仕組みづくりが重要ではないか。