「浅井長政の裏切り後」は食傷気味
NHK大河ドラマ「豊臣兄弟!」では、信長(小栗旬)の天下取りの日々と、その過程で次第に出世していく藤吉郎(池松壮亮)と小一郎(仲野太賀)の姿が描かれている。4月12日に放送された第14回「絶体絶命!」では、ついに定番の名エピソード・浅井長政(中島歩)の朝倉方への寝返りが描かれた。
このエピソードを描かずして兄弟の物語はあり得ない。長政の裏切りによって越前の朝倉義景(鶴見辰吾)との挟み撃ちの危機に陥った、信長の脱出行である金ヶ崎の退き口。ここで藤吉郎が、自らしんがりを買って出て犠牲を払いながらも成功を収める姿が、秀吉ものの作品の定番だ。
そこまではいい。でも、これまで多くの映画やドラマ、マンガや小説などで秀吉に触れてきた経験からは、いささか食傷気味である。なぜなら、さまざまな演出や作者の解釈が加えられたとしても、長政の裏切りから先の物語は、なんか段取り通りに動いている感を拭えない。
この後、姉川の戦い、比叡山焼き討ち、朝倉氏の滅亡、そして、小谷城での浅井氏の滅亡……。なんか信長と秀吉(と、秀長)のさまざまなドラマを描く背景として、雑に処理されているようにみえる。
朝倉氏が「当て馬」で終わりそうな気配
長政はまだいい。なぜなら、お市の方をはじめ娘の三姉妹という強烈なヒロイン格が存在する。なので、ドラマとしてはいくらでも創作を加えて、盛り上げることはできる。
これに対して、朝倉氏はなんかキャラクターが弱い。今回「豊臣兄弟!」で義景と共にキャラクター紹介に登場している主要人物は、朝倉景鏡(池内万作)だけ。ネタバレしてしまうと、この男、土壇場で主人である義景を裏切る。しかも逃げてきた義景の一族を自害に追い込み、首級を信長に差し出して本領を安堵されたという、卑劣な裏切り野郎である。しかも、それでのうのうと安泰に生涯を送れるはずもなく、最後は一向一揆に攻められて死亡……。まさに因果応報。
このほかにも、これから描かれるであろう信長の越前攻め、「信長絶対殺す」という使命感だけで生きている斎藤龍興が朝倉勢として立ちはだかったり……。歴史上は敗北したとはいえ、一筋縄ではいかないヤツらが満載なのだ。
なのに、今回の「豊臣兄弟!」でも、そこまで熱く描かれる気配はない。今年もまた、朝倉氏=「信長と秀吉の花道を血で飾った当て馬」として終わってしまいそうだ。
いやいや、別に朝倉氏は越前に引きこもっていた田舎のボンクラ大名ではない。本拠地である一乗谷は、京から逃れてきた公家や文化人によって独特の文化が築かれ、いまでは発掘調査により、繁栄した戦国時代の城下町であったこともわかっている。

