「越前の王」の世界線があったかもしれない

だが、考えてみてほしい。

百年来の宿敵と和睦がまとまった。それはいい。しかしその和睦が本物かどうか、誰が保証できるのか。今日和睦を結んだ相手が、明日また越前に攻め込んでこないとどうして言えるのか。朝倉氏は骨身に沁みて知っている。一向一揆との戦いに「解決」などというものはない、と。

ようするに朝倉氏は、静岡県民のソウルフード「さわやか」や、長野県のラーメンチェーン「みんなのテンホウ」のようなものである。

みんなのテンホウはかつて筆者が社長に取材した際、すかいらーくから全国展開を打診されたが断ったと語っていた。地元で圧倒的な存在感を誇り、地元で愛され、地元で完結している。全国展開など眼中にない。それの何が悪いのか。

信長に滅ぼされたから「負け犬」扱いされるが、滅ぼされなければ越前の王として悠々と君臨し続けたはずだ。「なぜ上洛しなかったのか」ではなく、「上洛する必要がどこにあったのか?」朝倉氏の歴史を丁寧に辿れば、そう問い直したくなるのである。

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