ウイルスは血液型を選り好んでいる?

さらに最近の先端的な研究では、一部のウイルスが人間の消化管細胞表面に存在する血液型物質を「選り好み」し、特定の血液型の人により効率的に感染しようとしていることが判明してきました。

ABO式血液型に関連する抗原は、赤血球だけに存在するのではありません。心臓や肺、肝臓、腎臓などの主要臓器から、筋肉、骨に至るまで、全身のさまざまな器官や組織に分布しています。

とくに胃や小腸、大腸などの消化管の上皮細胞表面には、赤血球表面よりも高密度で血液型抗原が発現しています。

どうやら一部の「賢い」ウイルスは、感染対象として適切な細胞かどうかを判断するために、これらの血液型物質の違いを利用しているようなのです。

つまり、ウイルスが「この血液型の人は感染しやすそうだ」「この血液型は避けておこう」といった具合に、宿主を選別している可能性があるということです。

ウイルスは感染した人の血液型情報を記憶する

ウイルスの増殖のしくみにも、血液型が深く関わっています。

ウイルスは宿主細胞に感染し、自己複製を完了した後、新たな感染拡大のために細胞外へと脱出していきます。このとき、感染した人の血液型情報を自分の表面に「記録」して持ち出しているのです。

まず、インフルエンザウイルスなどの一部のウイルスは、自分のコピーを大量生産しようとして、宿主の細胞(ヒトの細胞など)に寄生し、細胞内に自分の遺伝情報(DNAやRNA)を注入します。

そして、その細胞がもつシステムを利用し、ウイルスの構成タンパク質や遺伝物質を大量に合成(コピー)するのです。

やがて細胞がウイルスのコピーで満杯になると、細胞膜が破裂し、ウイルスのコピーが一斉に放出されます。この際、脱出するウイルスのコピーは、宿主細胞の細胞膜の一部を外側にまとった状態で出ていくのです。

つまり、A型の人に感染したウイルスは、A抗原の分子的特徴を表面に保持した状態で、次の感染対象を探しに行くことになります。

コロナウイルスパンデミック中の公共交通機関のイメージ
写真=iStock.com/Chan2545
※写真はイメージです

このA抗原の特徴をもったウイルスが別の人の体内に侵入した場合、どのような現象が起こるでしょうか。

その人がA型だった場合、体内の免疫システムは、A抗原の特徴をもつウイルスを「異物」として認識する能力が低下してしまう恐れがあります。

なぜなら、A型の人の免疫システムでは、A抗原を「自己の構成成分」として学習しているため、A抗原を表面にもつウイルスに対して警戒態勢をとりにくいのです。

その結果、免疫応答の開始が遅れ、感染が成立しやすくなると考えられています。