病気になりやすい血液型は何か。大阪大学名誉教授の深瀬浩一さんは「何らかの細菌やウイルスが細胞に侵入する際には、ABO式血液型のA抗原・B抗原・H物質といった糖鎖の一種が足がかりとして利用されている。たとえば、A抗原を受容体として利用するウイルスがあるとすれば、A抗原をもたないB型やO型の人には感染しにくい」という――。

※本稿は、深瀬浩一『血液型でわかる 病気とケガのリスク』(宝島社)の一部を再編集したものです。

検査医は特別なディスペンサーで生体材料を収集します
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血液型と感染症の複雑な関係

ABO式血液型の違いにより、病気のかかりやすさに実際に違いがあるのか、そしてその違いはどのような生物学的メカニズムによって生じるのか――これらの疑問について、血液型と感染症の関係からくわしく見ていきましょう。

感染症とは、細菌やウイルスなどの病原体が人体内に侵入し、増殖することによってさまざまな症状や機能障害が生じる疾患の総称です。

このうち、細菌は1つの細胞だけで構成された単細胞生物で、適切な栄養環境さえあれば、細胞分裂によって自律的に増殖することができます。私たちの体内に侵入した細菌は、体液や組織液を栄養にして、急速に数を増やしていきます。

一方でウイルスは、細菌とは根本的に異なる存在です。細菌よりもはるかに小さな微粒子で、細胞のような完整した構造をもちません。また、細菌とは違って単独では生存することができず、DNA(デオキシリボ核酸)やRNA(リボ核酸)といった遺伝情報はあるものの、自分自身で増殖する能力はまったくありません。

そこでウイルスは、ほかの生物の細胞に巧妙に侵入し、その細胞が本来もっている「遺伝情報の複製システム」を乗っ取って、自分自身のコピーを大量生産するという、極めて狡猾な戦略をとります。