業績は好調も、安全対策や地方の切り捨てには疑問符

こうした施策が奏功してか、近年の業績は好調だ。

2025年3月期の決算においては、2兆8875億円の売上高に対して経常利益が3256億円となり、株主に対する配当金の総額も、2024年3月期の321億円から2025年3月期の385億円に増配となった。

キュンパスやタイムセールなどの施策を活用して、顧客の新規開拓を行い、売り上げを伸ばすのは結構なことだ。だが、最近のJR東日本はどこか「浮足立っている」気がしてならない。

キュンパスの利用可能日であった2026年3月4日には、東北新幹線の福島県内の区間で倒木による停電が発生し、ダイヤに大きな乱れが出た。東北新幹線では、走行中に列車の連結が外れて分離するなどのトラブルが相次いでおり、鉄道事業に対する信頼が揺らいでいる。

ハイテクな攻めの姿勢とは対照的に加速しているのがローカル線の切り捨てだ。千葉県の久留里線の末端区間である久留里―上総亀山間を、2027年3月末をめどとした廃止方針を固めるなど、赤字路線の整理には極めてドライで、「地方路線の需要創出については消極的な姿勢である」との声もある。

JR東日本久留里線の普通列車(キハ38+37)の上総亀山行き。平山~上総松丘にて撮影。
JR東日本久留里線の普通列車(キハ38+37)の上総亀山行き。平山~上総松丘にて撮影。(写真=まも/PD-self/Wikimedia Commons

公共交通としての責任を問い直せ

JR東日本が掲げるLXが、単なる高収益路線の効率化と、地方路線の切り捨てを正当化する言葉であってはならない。新幹線物流の「はこビュン」や格安パスによる需要喚起は確かに鮮やかだが、その一方で「青春18きっぷ」に見られるような広域ネットワークの利便性は損なわれつつある。

鉄道事業の本質は、点(駅)と点(駅)のネットワークを構築することで、社会の血流を維持することにある。戦略的な格安きっぷで「移動のきっかけ」を作る巧みさは評価すべきだが、それを受け止める地方の「線」が細り、安全が脅かされるようでは本末転倒だ。同社が真に「生活様式を革新」しようとするならば、目先の増配や高効率な施策の陰にある、公共交通としての「責任の重み」を今一度問い直す必要があるだろう。

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