息子と心から楽しめたキャッチボール

25年の初冬、45歳になった河本さんに、対面取材としては2年ぶりに再会した。この年、息子は公立中学校に進学し、妻は部長に昇進した。自身も同時に、8年前に再就職したIT企業で地域限定正社員を経て、正社員となった。

奥田祥子『抱え込む男たち ケアで読み解く生きづらさの正体』(朝日新書)
奥田祥子『抱え込む男たち ケアで読み解く生きづらさの正体』(朝日新書)

「夫婦と子どもの3人がともに新たな節目を迎えて……僕だけが周回遅れのような気がしないでもないですが、あっ、はは……何とか2人に追いついて、無理せず、でも前を向いて少しずつでも前進していければと思っています。まだ道半ばですが、お互いに心を通わせることのできる息子、そして妻との関係を維持していければと……。今ようやく、そう、言えるようになった気がしています」

「息子さんとの関係がうまくいき始めたきっかけは、何だったのでしょうか?」

「キャッチボール、ですね。同居を再開してからしばらくして少年野球チームに入ったので、自主練習を兼ねて、初めて息子とキャッチボールをしたんです。英会話でもクラシック音楽でもなく、またお受験勉強でもなく、本当はこれを一緒に楽しみたかったんだな、って気づきました。

中学校でも野球部に入って今でも時々、キャッチボールをしています。息子のほうが下半身をうまく使って体重移動がスムーズで、ボールに力があって……。もうそろそろ、おやじのほうが子どものボールを受けられなくなるかもしれませんね。う、ふふ……」

そう言って相好を崩した。

【関連記事】
「共感できる部分はない人間、それが私の母」要介護3の88歳をフルで働きながら6年以上ケアする娘の"介護魂"
わが子が勉強しないのは「親のせい」である…「頭のいい子の親」が子供との会話の中で欠かさない4文字の言葉
「最後は夫のすべてを奪い、捨て去るつもりです」50代夫や義両親から罵倒され続ける40代妻の壮大な復讐プラン
「ADHDグレー」と診断された子どもたちが高確率であてはまる幼少期からの「危険な習慣」
なぜ日本人夫婦の3組に1組が離婚するのか…「価値観の違い」でも「セックスレス」でもない本当の原因