合格率4%「司法書士」に合格

ひきこもりの子どもと話しているとき、「資格取得=しばらく働かなくてすむ」といった考えがあるのではないかと感じるケースも少なくないが、健さんからは資格取得に対しての真剣さが感じられた。

そこで「司法書士として働いている人に、仕事の現実を聞いてみたらどうですか?」と提案。実際に知り合いの司法書士に、健さんの話を聞いて、アドバイスをしてもらえるように依頼した。

私が紹介した司法書士の先生は、まだ40代前半の若さにもかかわらず、都心の一等地に事務所を構え、かなりの人数を雇っている、敏腕である。

実際に司法書士に会い、いろいろと話を聞いているうちに、触発されたらしい。司法書士に「なりたい」という気持ちが、「絶対なる」という気持ちに変わったという。

それから5年の月日が経ったある日、突然、司法書士の試験に合格したという連絡が入った。5年も前のことだったので、すぐには誰の話か思い出せなかったが、司法書士の試験合格までの経緯なども書かれていたので、本当に驚いたし、心から祝福もした。

5年前の相談時の気持ちを持ち続け、無事に難関の司法書士の資格(例年の合格率4~5%)を取り、5年前に話を聞いた司法書士の事務所で、雇ってもらえることになったのだ。

雇用主となってくれた司法書士にも連絡して、5年前と今回の雇用のお礼を伝えたところ、「吉本さんが、コツコツと努力を続けている姿を見守ってきたので、無事に合格した現在、ウチで雇うことにしたんですよ」とのこと。試験に合格するまで、待ってくれたことにも感謝である。

今はまだ、働き始めたばかりなので、生活設計をどこまで立て直せるのかは未知な部分もあるが、司法書士という難関資格に40代で合格した健さん。その強い意思と、健さんを支えてくれる先輩司法書士のアテンドによって、立派に社会人としてやっていけるのではないだろうか。順調に働き続けることができれば、母親亡き後も暮らしていけるだろう。個人的にも応援しているところである。

資格を取得した先のイメージが重要

ひきこもり家族からの相談を受けているとき、健さんのように「○○の資格を取得したい」という話を耳にする機会は少なくない。だが、その多くは夢物語に終わってしまうか、働かずに済ませるための時間稼ぎになってしまう。

実際の相談者を振り返ってみても、資格を取得して就職どころか、資格取得さえ断念してしまうケースがほとんどである。

今回、健さんが就職までたどり着けたのは、資格の勉強に入る前に実際の仕事をしている先輩の話を聞き、仕事現場を見学して「資格取得後に自分が働く様子」を具体的にイメージできたことではないだろうか。

ひきこもりなど、働いていない子どもが資格取得を目指し、その資格を活かして就職をするのであれば、資格取得をゴールにしないことが重要だと、健さんを通して私自身も学べる事例となった。

トロフィーを掲げる男性
写真=iStock.com/howtogoto
※写真はイメージです
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